暁 〜小説投稿サイト〜
リリカルなのは〜優しき狂王〜
2ndA‘s編
第十四話〜覚悟と意思〜
[3/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

「…………あ?」

 画面を挟んだ向こう側に白い何かが見える。それがあると認識した瞬間、彼女はそちらに焦点を合わせた。
 そこにいたのは、右腕がなく、半ばで切られた杭を装填したデバイスを装着した人型であった。
 目視が出来るということは、お互いに射程圏内。そして、その人型は切られていない左腕の掌をなのはに向け、その隣には開かれた状態の夜天の書が浮かんでいた。

「――――」

 口から言葉すら零れてこない。
 なのはの心は恐怖という感情で満たされすぎていた。
 “今から放たれる魔法で私も血を流すかもしれない。”
 “もしかすれば、死んでしまうかもしれない。”
 “皆ともう会えなくなるかもしれない。”
 頭の中で広がっていくネガティブな『IF』に彼女は竦む。そういった、戦いや争いと言う闘争において最も単純かつ重い現実を彼女は生まれて初めて実感した。

「――――」

 少し離れた位置にいる人型の口が動いている。何と発声しているのかを聞き取ることはできなかったが、口が動いていくのと連動し、彼女の掌には確かに魔力の塊が形成されていく。
 もう発射されるのに幾ばくかもなく、とうとう目を瞑りそうになった時、それは起こった。



海鳴市・海中


 時間をほんの少しだけ遡る。
 ライは自由落下に身を任せたまま、海底へと沈んでいく。冬の海水はやはり冷たく、じわじわと、だが確実にライの体温を奪っていく。
 だが、ライの意識ははっきりとしていた。彼は空いている方の手で、腹部を貫く杭に手をかける。あの時、恐らく心臓を狙ったであろうその一撃を、ライは反射的に動かした手で着弾点を逸していた。もちろん、それが致命傷になったことに変わりはないが、即死しなかっただけでも御の字であった。
 杭を握った手に力を込める。そして歯を食いしばると、ライはそれを引き抜いた。

「――!!!―――――!!!!」

 海中の為、叫びは気泡となり海上に向かって行く。杭の先端の鏃の部分が傷を抉り、海水がその痛みを倍増させてくる。幸いなのはその海水が冷水であった為、痛みが長く続く前に感覚が麻痺したことであった。
 蒼月は即座にマスターの状態を把握し、バリアジャケットを展開。そのおかげで、腹部の傷からの出血量が減少していった。
 寒いからか、それとも血を流しすぎたのか、かなり緩慢な動きではあったが、次にライは自らのポケットに手をいれる。

(…………まだ)

 そのポケットに入れた手が、ライの思った通りの感触を伝えてくる。それはとても硬く、小さく、冷たかったが、今のライにとっては何よりも力強い存在としてそれを感じることができた。

(……まだ終わらない)

 海水が目に入るのを恐れて瞑っていた目を開ける。バリアジャケットの
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ