2ndA‘s編
第十四話〜覚悟と意思〜
[2/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
したのかどうかはなのはの知るところではないが、そうした過程を得てライが闇の書と思われる蛇でできた卵に取り付いたのを彼女は見届けた。
しかし、そこからの展開は彼女にとっては本当に理解できるはずもない、埒外の事態であった。
いきなり卵の中から人型が現れたと思ったら、ライを掴みそのままどこかに転移していったのだから。
「どこに?」
『なのはちゃん!反応があった!海の方に向かって!!』
呟いた言葉に返ってきたのは、アースラのオペレーターであるエイミィ・リミエッタからの彼らの行方であった。
「はい!」
返事を返すやいなや、彼女は海に向けて飛び始める。
状況を把握してもらうためか、飛んでいる彼女に並走するように一枚のウィンドウ画面が開かれていた。それに映されているのは今の海上の状況、先ほどの状況と同じようにライが卵から生まれた人型に掴まれていて風景が海に変化しただけのものである。
(急いで助けないと!)
内心で自分を急かしながら、飛行速度をあげようとしたが、それも流れていた映像を見たことでできなくなる。
「え?」
張り詰めていた緊張と熱意がその一言で抜けるようになくなる。
画面の中で、ライの身体が真紅の杭によって穿たれた。それを彼女は最初何が起こったのか理解出来なかった。
「え?だって、魔法は安全で……非殺傷設定が………え?」
ぽろぽろと口から溢れる戸惑いの言葉。その内容も目に写りこんでくる映像もひどく現実味を帯びない何かに見え、彼女の思考が追いついてこない。
『なのはさん!?』
通信で自分の名前を呼ばれるが、それに反応するような余裕は今の彼女にはない。
「赤い……血?」
当然のことだが、彼女は血を見たのが生まれて初めてということはない。しかしそれにも程度はある。彼女がこれまで見てきたのは、あくまで日常生活で負う軽傷程度のものであり、決して命に関わるようなものではなかったのだ。
映像の中のライが人型の腕と杭を切り裂きそのまま海に落下して行く。落ちながら彼の口と腹部から奇跡を残すように夥しい量の血が溢れていく。
それを呆然と見ることしかできない彼女はいつの間にか、空中で静止していた。それは彼女が呆然と立ち尽くした訳ではない。目的地への到着を完了し、機械的に飛ぶことを止めたからである。これはマルチタスクの能力の高さを示しているのだが、今この場合にとってはそれが仇となった。
目的地―――つまりは海上に到着したということは、彼女も敵との交戦をしなければならないということだ。しかし、今の彼女は既に戦意というものが存在しなかった。
そして、今彼女が向かっていた場に存在するのは、管制人格ではない。
ただ、自己防衛をするだけのプログラムである。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ