第四章
[8]前話
「私に薪を献上しろと」
「はい、この寒さならと思いまして」
「そうなのですか、そなたは賢いですね」
微笑んで言う女王だった。
「非常に」
「有り難うございます」
「これだけ聡明な娘は大事にしなければなりません」
シギュンを見つつの言葉だ。
「そなた、何が欲しいですか」
「褒美を頂けるのですか」
「何でも好きなものを。私としてはそなたを侍女にしたい位です」
「有り難きお言葉、ですが」
シギュンは女王に微笑んで返した。
「私は一介の木樵の娘、それ以外の者ではありませんので」
「だからですか」
「私なぞにはあまりにも僭越なお言葉です」
だからだというのだ。
「お言葉だけ受け取らせて頂きます」
「そなたの両親と共にいるのですね」
「そうさせて頂けるでしょうか」
「そなた程の者を傍に置けぬことは残念ですが」
女王はシギュンの言葉を受けて微笑んで返した。
「しかしそなたにその気がないのなら」
「はい」
「仕方がありません、ではこれからも村で幸せに暮らすのです」
「ではその様に」
「そしてその智恵を村の為、両親の為に使い」
そのうえで、というのだ。
「やがて夫となる者の為に使うのです」
「ではその様に」
「そなたの夫なる者は幸せですね」
シギュンの顔を見つつて、女王はこうも言った。
「そこまで聡明な者を妻に出来るのですから」
「いや、このことは本当に」
「そうね」
ホズとエリンもだ、女王と娘の話まで聞いて言うのだった。
「いい勉強になったな」
「思わぬことだったけれど」
「それでもな」
「いいことを学べたわ」
「そなた達もまた幸いです」
女王は二人にも微笑んで言うのだった。
「これ程聡明な娘がいるのですから」
「そのことに気付きました」
「今ようやく」
「気付けばそれでいいのです」
充分だというのだ、それだけで。
「では貴方達はこれから」
「はい、娘達と共に」
「その智恵を借りて生きていきます」
「そしてやがては」
「娘に婿を取らせますので」
「そうして幸せに暮らすのです」
女王は二人にも微笑みながら言った、そして薪を見ても言うのだった。
「この薪で暖まらせて頂きます」
「是非そうされて下さい」
シギュンもまた微笑み女王に言葉を返した、冬の寒い中で暖かさを与えてくれる薪を見つつ。
女王への捧げもの 完
2014・9・21
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