第一章
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女王への捧げもの
ホズはこの時だ、妻のエリンに家の中でこの話を告げられた。
「女王様がか」
「そう、この村に来られるのよ」
「そうか、それは素晴らしいことだな」
この国の女王は素晴らしい名君であり国の民の全てに慕われている、国を豊かにするだけでなく民の生活もだ。
それが為に民から慕われている、それはホズもエリンも同じだ。
ホズは家の中で麦酒を飲みつつだ、その大柄な身体で言った。
「女王様がこの村に来られるとは」
「それで村ではね」
「女王様にだな」
「そう、何か献上しようとね」
そうした話になっているというのだ。
「村の皆でね」
「そうか、ただな」
「ええ、私達はね」
エリンはここでだ、俯いてこう夫に言った。
「木樵だから」
「女王様への捧げものなんてな」
「木の贈りものなんてね」
「そんなもの何だというんだ」
ホズもだ、俯いて言うしかなかった。二人共金髪に青い目、それに白い肌だ。ただホズは大柄でエリンは小柄だ。
その彼がだ、こう言うのだった。
「何もないじゃないか」
「そうよね」
「一応狩りもするからな」
「猪か鹿でも献上する?」
「それだと他の奴がするだろ」
村人の誰かがというのだ。
「そんなものはな」
「女王様が喜ばれる筈がないわね」
「そんなありきたりものを捧げてもな」
「女王様に喜んで頂けないと」
「駄目だ」
ホズははっきりと言った、その彫の深い顔で。
「あの方にはな」
「そうよね、じゃあどうしようかしら」
「わからない、どうすればいいんだ」
「あれっ、そんなの決まってるじゃない」
ここでだった、部屋の中に二人の娘であるシギュンが来た。そのうえで二人に対してこんなことを言った。
「私達の贈りものなら」
「?何かあるのか?」
「いい贈りものがあるの?」
「私達の家は木樵じゃない」
だからだというのだ。
「だったらね」
「まさかと思うが」
ホズは娘の言葉を受けてだ、眉を曇らせて問うた。
「木か」
「そう、薪をお贈りしましょう」
「そんなもの贈って何になる」
「そうよ、何を言ってるのよ」
ホズだけでなくだ、エリンも娘に言った。母の若い頃に似ている彼女にだ。
「そんなものを贈っても女王様は喜ばレないわよ」
「喜んで頂けるわよ」
シギュンは微笑んで母に答えた。
「絶対にね」
「どうしてそう言えるの?」
「決まってるわよ、そんなことは」
「決まってるって」
「贈りものを献上した時にわかるわ」
その時にというのだ。
「そこでね」
「その時にか」
「そう、その時によ」
こう言うのだった。
「だからね
「薪をか」
「お贈りしましょう」
「馬鹿なことを言う」
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