第一章
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柔よく剛を
時任定義はかなり見事を体格を誇っている、身長は二メートルに達し体重は百キロを優に越える。筋肉は逞しく骨も強い。
怪力を誇り俊敏でもある、まさに無敵と言ってよかった。
その彼にだ、友人達は言うのだった。
「今レスリングをしてるよな」
「ああ、高校を卒業したらな」
そうしたらとだ、定義は教室の中で自分の席に座りながらその口を大きく開いて言う。分厚い唇の中にある白い歯はかなり大きい。目は大きく眉は太い、そして黒い硬い髪の毛を短く刈っている。詰襟がよく似合う。
「プレレスラーになるぜ」
「そうだよな」
「いつもそう言ってるよな」
「ああ、そしてな」
そうして、と言うのだった。友人達に。
「ハンセンさん超えるぜ」
「スタン＝ハンセンをか」
「超えるっていうんだな」
「馬場さんも猪木さんもな」
この伝説のレスラー達もというのだ。
「超えてやるぜ」
「そうか、じゃあな」
「頑張れよ」
「その為にはトレーニングをしてな」
そのうえで、と言うのだ。定義自身も。
「もっともっと強くならないとな」
「おいおい、まだかよ」
「まだ強くなるってのかよ」
「そうだよ、俺はもっと強くなるぜ」
定義はその口を大きく開けたまま笑って言うのだった。
「ザンギエフみたいになるぜ」
「言うねえ、ザンギエフかよ」
「あんな感じにか」
「なるってんだな」
「あそこまで毛深くもないしモヒカンにもしないけれどな」
それでもだというのだ。
「ああした感じになるぜ」
「そうか、じゃあ今以上にトレーニングして」
「強くなるんだな」
「飯も食ってな」
これも忘れなかった。
「幸いうちの家は食いものには困らないからな」
「御前のお店食堂だからな」
「それでだよな」
「ああ、幸いな」
食べものを扱う店だから食べるものには困らないのだ、余りそうならそれを食べればいいからである。このことも定義にとっては幸いしていた。
「お店は妹が継ぐぜ」
「料理上手らしいな、妹さん」
「それで御前はか」
「ああ、最高最強のプロレスラーになるぜ」
黒の詰襟の中の見事な体格を誇らしげにポージングさせてそのうえでの言葉だった。
「絶対にな」
「応援してるぜ」
「頑張れよ」
友人達もこう彼に声をかける、そうしてだった。
彼はプロレス研究会でも自己でもトレーニングに励んだ、その中で。
今度は部活の中で同級生つまり同じ武の仲間からこう言われた。
「他流試合とかもいいだろ」
「猪木さんみたいにか」
「ああ、どうだよ」
こう言われたのである。
「それもな」
「それもいいな」
定義は彼の言葉に頷いて返した。
「いい勉強になるしな」
「プロレ
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