暁 〜小説投稿サイト〜
妻が最初に作るもの
第二章

[8]前話 [2]次話
「実際にね」
「ですよね、だからですか」
「奥さんのお料理がですか」
「不安なんですね」
「どうしても」
「どうなのかな」
 やはり腕を組んでだ。大海は心配な顔で言った。
「本当に」
「それでしたら」
 ここで先程とは別の後輩が彼に提案した。
「一度奥さんに頼んでみたらどうですか?」
「奥さんになる人にだね」
「はい、実際にお料理を作ってもらって」
 そのうえで、というのだ。
「食べさせてもらって」
「そうして自分で確かめるんだね」
「そうしたらどうですか?」
 こう大海に提案するのだった。
「そうしたら」
「そうだね、それじゃあね」
「それじゃあですね」
「実際に食べさせてもらおうかな、ただ」
 ここでだ、大海は自分達つまり彼と香音の事情を話した。
「僕達明日婚姻届提出するんだ」
「じゃあ明日からですか」
「うん、夫婦になるんだ」
「じゃあ結婚してぶっつけにですか」
「明日からなんだよね」
 このことを言うのだった。
「一緒に住むんだ。彼女が僕のマンションに来て」
「それで晴れて夫婦生活スタートですね」
「どうなるんだろうか」
 大海は不安に満ちた声で言った。
「一体」
「明日からですか」
「うん、明日からだよ」
「明日全部わかるんですね」
「そうだね、泣いても笑ってもね」
 まさにそうなるというのだ。
「明日だね」
「そうですね」
「もうあれこれ言っても仕方ないかな」
 明日、まさにすぐにわかることだからというのだ。
「この期に及んで」
「そうですよね、じゃあ」
「明日ですね」
「明日何が出て来るのか」
「それを楽しみにしてね」
「うん、そうするしかないね」
 大海は腹を括ることにした、そしてだった。
 その日の夜だった、彼は香音が自分の為に作ってくれたその料理を前にした。仕事が終わって部屋に戻ってだ。
 丁渡香音も仕事から帰って来て料理を作ったところだ、その料理は。
 ゴーヤチャンプルにだ、葱と若布の味噌汁に。
 野菜の煮物、それに納豆があった。納豆はスーパーで買ったパックのものだが先の三つの料理はというと。
 どれもだ、彼にとっては。
「いいじゃない」
「大海さんの好物なのね、どれも」
「納豆も含めてね」
 まさにその全てがというのだ。
「僕好きなんだよ」
「よかった、じゃあね」
「今からね」
「食べよう、温かいうちに」
 二人でこう話してだ、そして。 
 大海はそのゴーヤチャンプルや味噌汁を口にした、そしてこう言うのだった。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ