第五章
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しかしその勝負が終わり蝶の巨大な骸を見下ろしながらだ、ヘミングウェイはレスターに対してこう言った。
「この展開はな」
「予想外だったな」
「完全にな」
そうだったというのだ。
「俺も思いもしなかった」
「俺もだよ」
レスターもだった、このことは。
「吸血鬼は話していたがな」
「それは考えていたがな」
「まさかな」
「蝶だったなんてな」
「それもこんな巨大なな」
考えていなかったというのだ、二人共。
「発想もなかったな」
「ああ、それじゃあな」
「今からこいつを持ってな」
「お巡りさんのところに行こうか」
「こいつが証拠だ」
犯人、そして二人がその犯人を見付け倒したことのだ。
「持って行ってな」
「それで終わりだな」
二人でこう話してだ、そのうえで。
その蝶を二人で持って警官のところに行った、警官は二人の話とその蝶の骸を見てこれ以上はないまでに驚いた、だが。
何はともあれこの話は終わった、そしてだった。
ヘミングウェイとレスターは約束通り警官から酒を奢ってもらうことになった、場所はサントドミンゴにあるバーだ。
三人でそのバーに座ってだ、そうして。
ヘミングウェイはカクテルを飲みだ、笑顔で言った。
「美味いな」
「ああ、そうだろ」
警官は得意げな顔で彼に応えた。
「この店のカクテルは絶品なんだよ」
「こんな美味いカクテルはそうはないな」
「アメリカでもだろ」
「ああ、キーウェストでも何処でもな」
アメリカにも、というのだ。
「ないぜ」
「そうだよな」
「ああ、そうだよ」
その通りだというのだ。
「最高の酒だ」
「遠慮なく飲んでくれよ」
警官はヘミングウェイに笑ったままで言う。
「何杯でもな」
「そうさせてもらうな」
「あんたもな」
警官はレスターにも言った。
「いいな」
「もう飲んでるぜ」
これがレスターの返事だった、見れば実際に美味そうに飲んでいる。
「この通りな」
「それは何よりだな」
「そうだな、しかし」
「しかし?」
「この事件のことだけれどな」
あの吸血蝶のことはというのだ。
「犯人は変質者ってことになってな」
「それで発表されるか」
「その仕業だったってことか」
「そうなってな、変質者が犠牲者を眠らせて血を抜いて吸っていた」
こういうことになるというのだ。
「それで話が終わるからな」
「そうか、それでその変質者は死んだんだな」
「ああ、死んだ」
警官は笑ってヘミングウェイに答えた。
「夜の街をパトロール中の警官達に発見されて射殺された」
「それは何よりだな」
「そういうことで終わった、ただあんた達への賞金はな」
「それはだな」
「政府からちゃんと支払われるからな」
約束通
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