第四章
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暫くは何もなかった、何も出なかった。
しかしだ、ここでだった。
レスターは兄と自分の周りを警戒しながら進んでいた、そしてふとだった。
上を見上げるとだ、ここで。
何かがいた、それはというと。
大きかった、優に三フィートはあった、ひらひらとしたその姿は。
「蛾、いや」
違った、夜の闇に慣れたその目に見えたのは。
赤に青、それにだった。
黒や黄色が模様の様に配色された四枚の羽根、細長い身体に。
六本の脚にだった、誤は小さく。
口は管だった、それはというと。
「蝶かよ、しかも」
上からレスターに迫って来ていた、それで。
彼は慌てて銃を抜いてその巨大な蝶に発砲した、その銃声を聞いてだった。
少し離れた場所にいるヘミングウェイが来た、そのうえでレスターに言って来た。
「おい、出たか」
「兄貴、上だ」
レスターはその兄に言った。
「上にいるぞ」
「上か」
ヘミングウェイは弟の言葉を受けてその上を見た、すると。
そこにいた、美しい色彩の巨大な蝶が。しかしその蝶こそがだとだ、ヘミングウェイは弟の様子からすぐに察した。
「こいつだな」
「そうだよ、こいつだよ」
レスターもその通りだと答える。
「こいつが来たんだよ」
「まさか蝶なんてな」
ヘミングウェイは上を見上げたまま言った。
「予想外だったな」
「モスマンじゃなかったな」
弟はここでもこの怪物の名前を出した。彼も見上げ続けている。
「生憎な」
「そうだな、こいつだけだな」
「そうみたいだな」
周りを見回した、するとだった。
蝶は他にはいなかった、あくまで巨大な蝶だけだ。他にはだった。
「幸いな」
「よし、二対一だ」
ヘミングウェイはレスターにあらためて言った。
「数はこっちが有利だ」
「そうだな、けれどな」
「相手は空を飛んでいる」
このことは相手の方が有利だというのだ。
「そこをどうするかだな」
「そういうことだな、じゃあどうして戦うんだ?」
レスターは兄にあらためて問うた。
「この吸血鬼と」
「何、来るさ」
これがヘミングウェイの返答だった。
「相手からな」
「蝶の方からか」
「来たその時にな」
蝶、二人が今相手にしているそれがというのだ。
「撃つ、いいな」
「そうしてか」
「銀の銃弾じゃなくてもいいだろ」
相手が蝶ならというのだ。
「羽根に穴を開けたらな」
「それで終わりか」
「ああ、落ちる」
蝶がというのだ。
「それで大体決まりだ」
「よし、それじゃあな」
レスターは兄の言葉、戦術のそれに頷いた。そうして。
二人で上を見上げたまま蝶が来るのを待った、そのうえで。
蝶がヘミングウェイのところに来た、そこで。
ヘミングウェ
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