第一章
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鬼神
強い、ただひたすら強い。
霍去病は戦の場では無敵だった、その強さに匈奴の将軍達も驚くばかりだった。
「霍去病が来たら終わりだ」
「あの者には誰も勝てぬ」
「あれだけ強い者はおらぬ」
「どうしたら勝てるのだ」
「勝てる者なぞいないぞ」
まさに天下最強の将と言われていた、その名声は若くしてだが叔父である大将軍衛青でさえ凌ぐ程だった。
それでだ、武帝も言うのだった。
「霍去病には全てを任せられる」
「軍をですか」
「そして戦を」
「あの者は負けぬ」
まさに決して、というのだ。
「どの様な相手でもどの様な戦でもな」
「勝ち、そしてですか」
「漢に多くのものを与えてくれますか」
「衛青も確かに強いがな」
武帝は彼のことも忘れてはいない、何しろ衛青を見出したのは他ならぬ彼自身だからだ。
しかしだ、霍去病はその衛青と比べてもというのだ。
「あの者は違う」
「兵法書も必要ないと言っていますな」
「うむ、戦の場は常に変わる」
霍去病が実際に武帝に言った言葉だ。
「だから読んでも意味がないとな」
「帝のお言葉にそう言い返すとは」
「僭越極まりないですが」
「ははは、よい」
皇帝である彼もこう言うのだった。
「あの者についてはな」
「その僭越もですか」
「宜しいのですね」
「特別だ」
霍去病に限ってはというのだ。
「あのままにさせておけ」
「はい、わかりました」
「その様に」
高官達も武帝の言葉に応える、そしてだった。
武帝は霍去病については彼の好きな様にさせた、戦の場でも宮廷でもだ。その戦の場において彼はまさに無敵だった。
戦えば必ず勝つ、敗れたことなぞ一度もなかった。匈奴達にとっては恐ろしいまでに手強い相手であり続けていた。
「まだ若いというのに」
「二十代だぞ、まだ」
その若さで一軍を率い戦っているのだ。
「精鋭を率いこちらに来て」
「平然として我等を倒していく」
「あの者がいる限り我等に先はないぞ」
「衛青だけでも手強いというのに」
「霍去病は手に負えぬ」
「どうにもならない」
「どうしたらいいのだ」
戦場では勝てない、それならというのだ。
「あの者はまだ若い、まだまだ生きるぞ」
「そして戦場に出て来るぞ」
「我等に勝ち続ける」
「何とかならないのか」
「あの者を負かせられないのか」
「手はないのか」
匈奴の者達は霍去病をどうすべきか、必死に考えていた。しかしその中の一人がだ、ここでこう言ったのだった。
「いや、あの者は確かに強い」
「強過ぎる」
「まさに鬼神だ」
「そうだ、鬼神だ」
彼も霍去病がそれに他ならないと言う。
「あの者には戦場では勝てぬ」
「だから今話し
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