第四章
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「ちょっと」
「そういえば宝石とか」
「そう、それ。今日君の誕生日だから」
「覚えていてくれたのね」
「忘れる筈ないじゃない」
彼は笑って私に言った。
「そんな大切なこと」
「そう、有り難う」
「お礼はいいよ。それでこれね」
こう言ってだ、懐から小さな濃紫のビロードの箱を出してきた。その箱を私に出してきてそのうえでこうも言ってきた。
「これプレゼントするよ」
「宝石ね」
「そうだよ、受け取ってくれるかな」
「受け取らない筈がないわ」
それがj宝石だからじゃない、彼からのプレゼントだからだ。プレゼントの中にある彼の気持ちを受け取るからだ。
「それじゃあ」
「うん、じゃあね」
「有り難う」
私は微笑んで彼の言葉を受けてだった、そのうえで。
その宝石箱を受け取った、そしてその箱を開けると。
そこにだ、あったのは。
緑の小さな宝石だった、私はその宝石を見てから驚いた顔になって彼に顔を向けて尋ねた。
「このことも知っていてくれたの」
「君の誕生石だよね」
「ええ、エメラルドはね」
まさに今月の石だ、エメラルドは。
「それにね」
「君緑が好きだよね」
「だからね」
「エメラルドにしてくれたの」
「そうなんだ、喜んでくれたかな」
「最高の気持ちよ」
私はこれ以上はない位の笑顔になっていることが自分でもわかった。その笑顔で自分の前にいる彼に言った。
「本当に有り難う」
「じゃあ今からね」
「今から?」
「食べに行こう」
こう言うのだった。
「今からね」
「何を食べに行くのかしら」
「予約取ってるよ、イタリア料理のレストランにね」
「パスタね」
「パスタでもワインでもね」
何でもだとだ、彼は私に答えてくれた。
「一緒に食べよう」
「そちらは赤いものでいいかしら」
私はくすりと笑って彼にこう返した。
「食べる方は」
「トマトだね」
「それにワインもね」
「赤いものでいいかしら」
「うん、いいよ」
彼も笑顔で私の言葉に答えてくれた。
「二人で赤いものを楽しもうね」
「緑が好きな私だけれどね」
「赤いものもね」
こう二人で笑顔で話してだ。、そうしてだった。
私達は二人で夜の街の中に入った。そこでも緑のネオンの光を見たけれどその緑も私は見られて嬉しかった。
ひとかけらのエメラルド 完
2014・3・30
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