第二章
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女に合わせて。
暫くしてその彼女がやって来た。ふわふわとした草色のロングスカートに白いシャツ、淡いピンクのカーディガンだ。靴下は清楚な白だ。そしてその丸眼鏡と黒く長い三つ網。そういったものを見ただけでもう恵一はその目をハートマークにさせてしまうのだった。
「待った?岩尾君」
「いや、全然だよ」
その大きな身体を弥生にたなびかせるようにして答える。
「僕も今来たところだよ」
「そう、よかった」
弥生は彼のその言葉を聞いてまずは微笑む。
「私自分が遅かったんじゃないかって思って驚いたのよ」
「あれ、時間は丁度だけれど」
「それでもよ」
その清らかな顔で微笑んでの言葉だった。
「岩尾君がもう来てるから。そう思って驚いたのよ」
「そうだったんだ」
「ええ。ところで」
ここで弥生は話を変えてきた。
「何?」
「この店ね、私大好きなのよ」
その顔が今度はにこやかな笑みになる。少女そのままの屈託のない笑みだ。恵一はその笑みを見てまたメロメロになるのだった。
「そうだったんだ」
「そうなの。ここを待ち合わせ場所にしてくれて有り難う」
「ううん、ただ何となくここにしようって思っただけだから」
「何となくなのね」
「そうだよ、何となく」
こう答えるが真実は隠している。
「だから気にしないで」
「そうなの」
「そうだよ。じゃあ中に入るわよね」
「ええ」
恵一の言葉にこくりと頷いてきた。
「それじゃあ」
「橘さんはどんなアクセサリーが好きなの?」
恵一は店に入る時に弥生にそれを尋ねた。木が碁盤の目の様にガラスを入れたその扉の向こうには様々な品物が二段のテーブルや壁にかけられているのが見える。大きい品物もあれば小さな品物もある。またそういったものを見て楽しむ女の子達の顔も見える。
「ブレスレットとかペンダントかしら」
「ペンダントが好きなの」
「そうなの」
恵一の言葉にこくりと頷く。
「銀色のが特に」
「ふうん、そうなんだ」
それを聞いて納得した顔になるが実は違っていた。これも先に彼女の女友達の何人かから聞いて調べていた。だから今のやり取りは彼の情報収集からシュミレーションしての計画的なものである。ただしそれは当然ながら彼女にはあくまで秘密である。
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