第十三話 同居人
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必ず拓洲会の本部まで辿り着く。それを為すための機会もあるし、その機会に気づける頭もある。俺はそう判断したんだ。だから細かく指示は出してない》
「ちょっ……ちょっと待て。俺は別にヤクザの方面に顔が効いたりしないぞ?俺は善良に生きてきた一市民なんだ。期待する方がおかしい、その見立ては間違ってるだろ」
《じゃあ、ヒントをあげようか。210号室の同居人》
田中からそれを聞いた時、小倉は一瞬で身が粟立った。なぜ?田中はどうしてその事を知っている?自分自身でさえも、その事実は忘れかけていたというのに。いや、もしかしたら、積極的に忘れようとしていたかもしれない。田中の能力には、"実験"の一回目から驚かされているが、まさかその力が、こんな所にまで及んでいるとは……
《分かった?分かったよね?じゃ、"愛の実験"三回目のミッションは、拓洲会本部に行くこと、たったそれだけという事で。それだけやってくれれば、後は何とかなるよ。今度は少し、リスクは上がるね。だけど、俺の計画通りに進めば、必ず謙之介は無事に帰ってこられる。それは間違いがないし、これまで2回も、そうだっただろ?信じるか、信じないかは謙之介の自由だが……俺を信じて、行動してくれる事を期待しているよ》
田中とのホットラインは切れた。静かになった部屋に1人残された小倉は、ポケットから自分のスマホを取り出す。小倉が操作を進めると、アドレス帳のアプリには、数少ない連絡先の一つの、ある番号が表示された。小倉は発信のボタンをタップする。程なくして、スマホのスピーカーからは、トゥルル……という発信音が流れ始めた。
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《おーす!どしたん小倉、急にかけてきてよォ!》
電話に出た相手は、少し枯れ気味の声ながら、元気に自分の名前を呼んだ。小倉は、その声に、かつての友人の人となりを唐突に思い出した。大柄な身体つき、厳つい顔をしているが、しかし鈍足でノロく、仕草は妙に可愛い所があり、手癖の悪い連中も多かったあの学校の中では、まだ一本筋を通している所もあった。
彼の名前は町田一正。甲洋野球部野球部寮210号室に、小倉と一緒に住んでいた、
関西のヤクザの息子である。
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