第十三話 同居人
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お前がやる事やっとらんせいやって、そうとられるんもしゃあないんと違う?理屈で考えて正しいとか、間違ってるとかやなくて、みんながお前のやり方に納得してへんねんて」
「…………」
「今日もイレギュラー出たやんか。ほんで、橋本は鼻の骨折ったねんぞ。あいつもう、夏出られるか分からへんわ。俺らはな、ボンボンのお前と違うて野球しかあらへんねん。野球で結果出さな、大学にも行かれんし就職もイマイチなボンクラばっかりやねん。野球に人生かかってるんや。そんな野球をな、1年の整備ミスに邪魔されたないんは分かるやろ?まぁ、ミスは出るもんやけど、少なくとも、ベスト尽くしたミスやないと納得できへんわ。その点、お前はベストを尽くして1年を指導したんか?」
「……シバく事がベストなんですか?」
「お前はそうは思わんかもしれんけど、みんなはそう思ってんねんて。それが一番効くと思ってんねん。1年の教育係なる、言うたんはお前やろ?みんなに、任されてるんやで?だったら、みんなのな、そういう希望にもちょっとは応えたらなアカンのとちゃうか?なぁ、頼むでホンマ」
理解があるような話し方をする主将の姿を、小倉は初めて見た。その目には呆れと、同情と、懇願の色があった。今は厳しい事ばかり言っている人だが、もしかしたら、自分が考えているような事を、この人も考えた時期があったのかもしれない。しかし、この人は結局、主将として、自分の中の正しさよりも、チームの民意の受け皿となる事を選んだのだ。自分の正しさは、一方で自分だけの正しさである。それを分かっていたのだろう。
小倉も、揺らいだ。ぼんやりとした意識の中で、ある決意が固まっていった。
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「……これ、どう?」
小倉がふと視線を上げると、高田が栄養ドリンクの瓶を片手で持ちながら、自分の前に立っていた。小倉は黙ってその瓶を受け取る。中身をグビグビと飲み干していく小倉の様子を、高田はジッと見下ろしていた。
「……最近、顔色が良くないんじゃない?」
「……かもしれないな」
「無茶はしちゃダメよ」
高田はそれだけ言い置いて、踵を返して自分の席に戻ろうとした。小倉は咄嗟に手を伸ばす。小倉の伸ばした手はまた、素早く振り向いた高田の身のこなしにかわされてしまった。初めて言葉を交わした時のように。
「何?」
「ありがとう」
一言、空になった瓶を見せながら言った小倉に、高田はまた背を向けた。
「どういたしまして」
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「……そう、それでね。また私達がアテにされた訳。何せ、公安も警察も日本
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