コヨミフェイル
012
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の言葉を繰り返していた。
心の中で自分は受けいられないのではないかと思っていたからだろう。拒絶されないことがわかった瞬間、堰を切ったように底知れない喜びが湧き出していた。
「やめてよ、お兄ちゃん。馬鹿みたい」
月火が照れ臭そうに頬を指でポリポリと掻きながら言った。
「で、どうするの、お兄ちゃん?」
「……そうなんだよな。探し出すしかないか…………」
「探し出すにしても火憐ちゃんに憑いている怪異が何かわかっているの?」
「わかっておる。火憐とやらに憑いておるのは黄泉蛙という蛙の怪異じゃ。そして、うぬを狙っておる」
忍が僕の後ろで顔だけを出すようにして言った。
「えっ…………」
困惑したように月火は一歩後ずさった。
「詳しいことは後で我が主様、つまりはうぬの兄に聞けばよい。とにかくうぬは怪異に狙われやすくなっておる。じゃからうぬは怪異に憑かれた火憐とやらに襲われたのじゃ。今もいつ襲われるかわからん」
「……う、うん」
後半部分の意味がわからなかったのか気の抜けた返事になっていた。いきなり存在力と言われて理解できる方がおかしいというものだろう。ましてや未だに自分が怪異である驚愕の事実さえ知らされていないのだから。
「そこでじゃ、我が主様よ。一つ提案があるんじゃが」
と、僕の方を見て忍が言った。
「なんだ、言ってみろよ」
「お前様は嫌じゃろうが、うぬの妹御を餌にして釣るというのはどうじゃ。勿論相応のリスクが生じるが、探す手間は省ける」
「月火を怪異の前に差し出すということだよな?」
できるわけがない。リスクどころの話しじゃない。
「じゃが、黄泉蛙は死にかけじゃ」
「だったらなおさら慎重にしてもいいのではないのか」
「儂が言いたいのはそうじゃなくて、死にかけの黄泉蛙が何をしでかすかわからんと言っておるのじゃ。探しておるうちに目標を変更したらどうするのじゃ。例えば委員長の娘にのう。あやつじゃて己の心に怪異を住まわせておるじゃろうが」
「あっ…………」
そうだった。
迂闊にも失念してしまっていた。夏休みに色々あったとは言え、失念してしまうとは、迂闊にもほどがある。
この迂闊さがこの件を引き起こしてしまったのではないのか。
「くそっ」
「まあ、そう自分を責めるでない。それよりもどうするのじゃ?」
「…………月火を囮にはできない」
黄泉蛙に遭遇したとして月火を無事に逃がすことができる自信がない。それでもし月火の身に何かあれば本末転倒もいいところである。それならばまだ探し回る方がまだ現実的だ。
「なら、どうするつもりなのじゃ?」
「考えがある。忍、お前の存在力はどれくらいなんだ?」
「皆無じゃが、それがどうしたのじゃ?」
どこか不満そうに言う忍
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