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闇物語
コヨミフェイル
012
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で、千石ちゃんは蛇だ」
 「ええっ!!」
 まさか既に事が解決している自分にも話が振られるとは思わなかった千石は目を少し見開いて驚いていたが、それ以上に驚いていたのは月火だった。口を大きく開けて、飛び出しそうなほどに目を剥いていた。
 「あのお呪い騒動で唯一お呪いが成功したのが千石に対するお呪いだったんだ。それでそのお呪いというのが蛇切縄、つまり蛇だった。だが、案ずるな。千石ちゃんについては阿良々木先輩と高名な退魔師によって払われている。心配はない」
 神原の言葉を聞いた月火はわかりやすいほどに胸を撫で下ろした。しかし、忍野が高名な退魔師であるとお世辞にも言えない。どっちかというと巧妙な退魔師だろう。
 「ごめんね」
 月火が唐突に言った。
 初めうちはキョトンとしていた千石だったが、その言葉が自分に対してのものだと知るや否や、先程よりも目を大きく見開いてきょときょとと助けを求めるように僕と神原を交互に見た。
 「友達なのに気付けなかった」
 「い、いいよ。仕方が無いよ」
 自戒の念を多分に含んだ言葉に千石が手を顔の前でぱたぱたさせた。
 「そういうことだ、月火。怪異の知識のなかった月火に気付けというのはあまりにも横暴だ。詳しいことは事が片付いてから包み隠さず、伝える。今は火憐をどうにかしなければならない」
 「うん、わかった。だけど、一つだけ確認させて」
 「…………なんだ?」
 先程まで自分を責めるような唇を噛んでいたのが嘘のようなあまりにも真剣である月火の目に気圧されて言葉がすぐに出なかった。
 「大丈夫なの?」
 「あん?」
 「日に当たると死んじゃうとか、ニンニクを食べても死んじゃうとか、聖水を被ったら死んじゃうとか、十字架に触れると死んじゃうとか、心臓に杭を打たれたら死んじゃうとか聞くよ?」
 「…………」
 確かにそう言われているが、もしそうなら僕は今まで何回死んでいることになるんだ。日常的に目にすることがない聖水とか杭とかに至ってはほとんど考慮する必要がないと思うだ。
 まあ、だけど、そんなこともわからないほどに僕の身を案じているのだと思うと、自然と笑みが零れた。
 「言ったろ。僕は吸血鬼もどきだって。僕は吸血鬼に限りなく近い人間なだけであって吸血鬼じゃない。まあ、厳密に言えば人間でもないけど、取り敢えず大丈夫だ」
 「お兄ちゃん……」
 安心したのか声色を和らげていた。
 「そういうことだから大丈夫だ」
 「そう。うん、わかった」
 「…………怒らないのか」
 「……なんで?」
 「隠していたことだよ」
 「いいよ、別に。家族だからって隠し事はしてはいけないなんてことはないし」
 いつかの八九寺と同じことを言う月火。
 「…………ありがとう。ありがとう」
 それに頭を垂れて感謝
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