コヨミフェイル
012
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、そういう性質であるらしい。
神原は小学生のときに初めてそれを使った。そう、初めて。
今では想像できないだろうが、小学生のとき神原は運動神経がからっきしなく、そのせいでからかわれていたらしい。そんな状況から脱しようと、近々開かれることになっていた運動会の徒競走で一等を取りたい、と半信半疑で悪魔の手に願ったのだそうだ。
だが、悪魔はその願いの裏にあった、自分をからかう同級生に対する憎しみを徒競走で一緒に走るはずだった同級生四人を殺害するという形で結実させてしまった。神原はそれに無意識ながら気付いていた。
だから、神原はそれを腕のミイラが猿の左手のせいにした。そうすることで自分が意に反して同級生に手を掛けたと思い込むためだった。
そして、二度目に自分を拒んだ戦場ヶ原先輩の隣にいたいと願ったのだ。小学生以来使わないと誓っていた悪魔の手に願ったのだ。そして、例に漏れず、悪魔は神原の願いの裏にあった戦場ヶ原のそば、神原がいるはずだった場所に僕がいることに対する憎しみを結実させようとした。僕がここにいるのだから結実はしなかったのだが。
そんな、神原にとって負の遺産であり、重い代償であり、見たくもないであろうその腕を神原は曝していた。
「お、おい、神原……」
「いいのだ、阿良々木先輩。阿良々木先輩にだけ告白させるわけにはいかないと思っただけだ。阿良々木先輩のことだから自分だけばらすつもりだろうとわかったからな」
まるで好きにしてくれと言わんばからに神原は左手を月火に突き出していた。それを目を丸くしながらもまじまじと月火は見ていた。
その隙に忍は月火の腕から逃れて僕の後ろに身を隠した。
「これも怪異なんだよね」
「ああ。レイニー・デェヴィルって言って、宿主の願い事を叶える怪異だ。私はそれに願ってその代償としてこんな醜い腕にさせられたがな」
神原は毎日見ているはずの猿の腕をどこか懐かしそうに、そして恨めしそうに眺めて言った。
猿の腕は神原の二の腕まで侵食している。
元々は手首までしかなかったはずの猿の腕のミイラだったものは神原の腕となり二の腕に達するほどに成長している。
成長するには糧が必要であるのは僕の血を糧にして成長する忍を見れば、わかるだろう。糧を必要としていないために命を落としたときの姿のまままったく成長していない八九寺を見ればわかるだろう。
神原の場合はその糧が命だ。
もちろん神原はそのことを意図的に隠しているのだろう。それを明かすほど僕も野暮、というか馬鹿ではない。このことを明かしたところで神原の代償が返ってくるわけでも(返るならそれを代償とは言えない)月火を怪異から遠ざけられるわけでもない。何にもならないのだから、これは墓場まで心の奥にしまっておこう。ま、元々そのつもりだったが。
「それ
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