コヨミフェイル
012
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「お兄ちゃん、私に隠していることあるんじゃないの?」
「………………」
黙秘権発動したが、
「例えばその首筋の傷とか」
「なっ!?」
次の瞬間には無効化された。
傷を隠すように手で押さえたが、時既に遅しである。
「気付かれていないとでも思った?」
火憐ちゃんは気付いていなかったけど。
と月火は付け加えた。
「いつからかは知らないけど、ずっとその傷治っていないよね?それにその傷――吸血鬼に噛まれたみたいだけど」
「……………………」
気付かれていたのかよ。
言葉通り汗水垂らして髪を伸ばした僕の苦労は何だったんだと思うと、自嘲の笑みが零れた。
「春休みにお兄ちゃんが家出したことと春休みに流れていた金髪の女の吸血鬼の噂に関係しているんじゃないの?」
「……………………」
揃いも揃って勘が良すぎるぜ。
「何を隠しているの、お兄ちゃん?」
月火はずいっと僕の方に歩み出た。僕の反応から確証を得た月火の目には確信の色が見えた。
さすがはファイヤーシスターズの参謀役をしているだけはある。
「阿良々木先輩の遣り方も選択肢の一つだとは思うのだ。しかし、今回はそれで失敗してしまった。他の遣り方に目を向けるべきではないか、阿良々木先輩?」
成り行きを黙って見守っていた神原が出し抜けに言った。
「……神原……」
「……神原さん……」
「遠ざけるだけではなくて、導く必要があると思うのだ。勿論怪異を知った上でだ、阿良々木先輩」
神原の言っていることに間違いはないし、遠ざけられていたかどうかも怪しかったが、遠ざけようとしてこの結果なのだから、僕がどうこう言える立場ではない。
とは言っても、神原の言うことには一理ある。
「そうだな、わかったよ」
銃を突き付けられたときのように両手を上げて、降伏の意を表明した。ハンズアップである。
「だけど、時間がないから手短に済ませるぞ」
と、言って足元の影に向かって元世界最凶の怪異の名を呼んだと同時に、戦闘機を甲板に運搬する空母の昇降機に乗っているかのようにゆっくりと影の中から見るからに不機嫌そうな忍が浮かび上がってきた。
月火はその現象を前にして目を丸くして驚愕していた。無理もないだろう。これに驚くなという方が酷だろう。
だが、月火が正常に戻るまで待てないので説明を始めた。
「こいつは忍。元世界最凶の怪異だ」
「怪異…………」
「そうだ。忍は吸血鬼なんだ。悪い奴じゃない。それだけは保証できる」
「吸血鬼…………」
月火は未だに混乱しているようで目を丸くしたまま硬直していた。と思った時には覚束ない足取りで忍の目の前まで歩を進めていた。
忍は「なんじゃ」と言わんばかりの目で月火を睨めつけていたが、そんなことも
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