コヨミフェイル
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「乗り心地はいかがだったかい、鬼いちゃん」
「乗り心地も何も生きている心地すらしなかったけどな」
無表情で抑揚なく話す斧乃木ちゃんと打って変わって、僕は舞い上がった土煙にむせながら、言葉につまりながら言った。
「童女に家まで送ってもらえることに感極まって生きている心地すらしなかったって、狂気じみた変態だね」
「今僕がこんな状態じゃなかったら、突っ込んでいるところだけど、本当にごめん。少し休ませてくれ」
突っ込む気力どころか、話す気力がぎりぎり残っているほどにノックダウンされていた。
というのも、移動方法が移動方法だった。
影縫さんの言う通り、時間は大幅に短縮できたが、短縮できるのも当たり前だった――意識がブラックアウトしかけるほどの速度で移動したのだから。
僕は斧乃木ちゃんに抱きつ、もといしがみつくように言われてイヤッホーイとか勿論言わずにしがみついてみれば、唐突に腕が引きちぎられるかと思うほどの速さで斧乃木ちゃんが空に向かって跳んだのだ。
そう、跳んだ、ジャンプしたのである。
斧乃木ちゃんは『例外の方が多い規則』で自分の脚の体積を爆発的に増加させたエネルギーで跳んだのである。
そのときに掛かったGで意識が飛びそうになったのだ。勿論降り立つときも同じ速さだ。多分このとき僕は史上最強の絶叫系を体験したと言える。あまりのGに絶叫する暇がなかったけど。
着弾地点がちょうど家の前だったことで驚きも一入だった。レーザー誘導顔負けの精度である。少しでもずれていれば、半壊どころか家が全壊するところだった。
「一度しか来ていないから、場所を大まかにしか覚えていなかったけど、ドンピシャだね。よかった」
とか言っているのを聞いて今頃背筋に冷たいものを感じていた。
家に着地しなかったのはよかったけれど、これどうするんだよ。クレーターできてんぞ。補修費払えるのか?
「休ませたいのは山々なんだけど、できないみたいだ」
休ませたいとまるで思っていないような棒読みで斧乃木ちゃんが言ったそのとき。
「お兄ちゃん!!これは何があったの?!なんで家の前にクレーターができてるの!!」
玄関を破壊せんばかりの勢いで開けた月火が目を白黒させて言った。
「月火!」
月火を視認するが早いか、朦朧とする意識がはっきりして気付かぬ間に駆け出していた。
深さが一メートル、半径が二メートルあるクレーターから飛び出して、門ぴを飛び越えて、月火に飛びついた。
「大丈夫か!どこか喰われたりしていないか?怪我とかもしてないか?」
飛びついた勢いのまま玄関に押し込んで、いつかのように押し倒し、浴衣を乱暴に剥いだ。
このとき、腰まで伸ばされていた漆黒の髪が振り乱れ、少しスカートに見えて、
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