コヨミフェイル
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ゃないのか?」
「む?確かにフロイトの後継者を自任しているが、それほど変態であるつもりはない」
「そっちに関する重傷じゃねえし、そのことなら心配せずともお前は十分致命傷だよ!意識不明の重体だよ!」
フロイトの後継者を自任している時点で致命的だろ!
「褒めてくれるのか、阿良々木先輩」
「褒めてねえよ!」
「ベッドに阿良々木先輩を押し倒してあんなことやこんなことをする想像を膨らませていたことを謝らなければならないと思っていたが、まさか褒められるとは。どう謝ろうとずっと考えていたが、取り越し苦労だったか」
「何してんだよ!普通に青ざめるわ!褒めるわけないだろ!後ジャージの破れたところから肌が見えるっていうことはその下には何も着てないだろ!」
今気付いたけど!
「阿良々木先輩に喜んでもらえて無上の光栄だ」
「喜べねえよ!月火!神原に着せる服を持ってこい!」
と、言うと、了解と言って月火は部屋を飛び出していった。
出し抜けに聞こえた押し殺したような笑い声に振り向くと、場違いにも馬鹿な掛け合いしていた僕達に千石が忍び笑いをしていた。
意図もなく言い合っていたことで知らぬ間に場を和ませていたことを知って自然と笑みが零れた。
だけど、神原は先程のテンションとは打って変わって、じっと僕を見ていた。
「どうした?」
と、訊いても
「何でもない」
とだけ言って目を逸らした。神原が言葉を濁すことが珍しいだけに気になってしようがなかったけれど、
「で、本当にその姿はどうしたんだよ、神原」
すぐに顔を引き締めて声をできる限り落として神原に訊いた。勿論この質問には神原の怪我に怪異が絡んでることを前提にしている。月火に席を外してもらったのも、他でもない、月火の耳に怪異に関することを入れさせないためである。
事態を考えれば、もうそんなことを言っている余裕はないと言えるのかもしれないが、それでも月火には、いや妹達には怪異には関わってほしくはない。それで再び二人に災難が降り懸かるようなことあってはほしくない。それにこれ以上誰かに神原と同じ目には合わせたくない。
怪異に一度遭えば、曳かれる。
と、言うように二人は怪異に曳かれているのだろう。
これがその結果と言える。
ならば、ここはこれ以上関わりを持たさないようにして怪異から遠ざけるのは当然で、それは兄であり、吸血鬼もどきの僕の役目なのだ。
「これは――」
顔を引き締めた神原が一文字に結んだ口を開いた――その瞬間だった。
「火憐ちゃんだよ」
戸口からの声が神原の声を掻き消した。
神原に着せる服を取りに月火が駆けていった方向からだった。
そして、聞こえてきた声は月火のものだった。
「なっ……」
口を開けたまま絶句した。
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