コヨミフェイル
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はないのだ。僕なんかより比べものにならないほどに生きる価値のある奴なんだ。運動神経において右に出るものはいない。勉強もできる。そして、分け隔てない竹を割ったような性格で誰からも慕われている。
どの点においても僕より優れているというのに僕がのうのうと生きて、神原が死ぬ道理はない。
それに二十歳になれば腕も元通りになって、ちゃんとした人間として人生を全うできたはずなのだ。
「神原に電話してなかったら」
僕のせいなのだ。
思慮に欠けすぎていたのだ。
神原に頼るばかりに怪異に関わらせてしまった。本来怪異からは遠ざけなければならないにも拘わらずだ。
死ぬべきは僕なのだ。
「そんな顔をしないでくれ、阿良々木先輩」
神原が俯いて奥歯を噛み締めている僕の頬に手を添えた。
「神原……」
まるでどこぞの悲劇のようである――が、それは違う。
死を間近に迎えた末期の患者を家族が見守っているような構図だが、まるでこれは悲劇ではない。
神原が死んでしまうことが悲劇ではないということではない。もし、そうであったなら、それは今世紀最も悲劇な悲劇だろう。
だが、忘れてはいけない。
神原は変態なのだ。
「興奮するじゃないか」
「へっ?」
神原はばふっとベッドに背中から倒れ込むと、自分を抱きしめるように、胸の前で腕が交差させて肩を掴んだ。
「阿良々木先輩の寝台で阿良々木先輩のニオイに興奮していたばかりだというのに、これ以上興奮させられたら尊敬して止まない阿良々木先輩にさえも言うのも憚れるぐらいの淫事の限りを尽くし兼ねないではないか」
しまいに神原は欣幸の至りといった風な顔で小刻みに身体を震えさせた。
「お、お前平気なのか?」
状況を飲み込めなかった。
この神原がいつも通りの神原だということははなはだ残念なことだが、いつも通りの神原である。しかし、神原に生気がないのもまたその通りだった。負と正が同居してるという感じだ。
「平気でもあるし、兵器でもある。実は私は最終兵器後輩なのだ!」
「大胆不敵にモロパクリしてんじゃねえよ!というか、その通りだと前世どころか現世でもサイボーグじゃねえか!」
平気っていうか、元気そのものの神原後輩だった。
「何を言う、阿良々木先輩。最終兵器彼女はサイボーグじゃないぞ」
「…………そうなのか。ていうか、それより、体は本当に大丈夫なのか?」
「う〜ん、擦過傷十ヵ所、打撲二十ヵ所ぐらいだ。あっ、それと、骨折が三ヵ所だ。つまり、どうってことはない」
神原は体を見回してから腰に手を当てて、胸を張るようにして言った。
骨が三本折れているならその動作ひとつひとつに激痛を伴うはずだが、まるでそんなことは無いようで、ケロっとしている。
「それを重傷って言うんじ
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