コヨミフェイル
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いう表現がしっくりくる感じでいなかった。人っ子一人ならぬ僕っ子一人いなかった。いや、僕っ子と共に道路を深々とえぐったようにできたクレーたーさえも消えていた。きっと僕っ子の仕業だろう。
ちょっとの間というのが僕を家まで送り届けることしか含まれないのであれば、消えたって責められることでは無論ないが、もう少しいたっていいんじゃないかと心中で少し悪態をついていると、
「何してるの、お兄ちゃん!?こっち!」
階段を上り切ったところで腰に手を当てて立っている月火の金切り声に意識を逸らされた。
月火の台詞が字面だけを見ると、『何してるの、お兄ちゃん!?エッチ!』にも見えなくはないと思うのは僕だけだろうか。
…………気のせいだ。気のせいに違いない。気のせいでないわけがない。
頭を振って馬鹿な思考を追い出して階段を上がった。月火が先導した先は僕の部屋だった。中に入り、見回すと、ベッドを心配そうに眺める千石が目に入り、千石の視線を追うと、ベッドに寝かされている神原が目に入った。顔には悲痛の色が見えていて、首から下に掛けられている布団の下にどんな痛々しい後継があるのかを窺わせていた。
「神原っ!!」
その瞬間に僕はベッドのそばに駆け寄っていた。
「阿良々木先輩か。先程の地響きは先輩の仕業だとすぐにわかったぞ、ふふっ。相変わらずだな、阿良々木先輩は」
僕の声に反応して、神原が目をおもむろに開けて、体をゆっくりと起こした。
体を起こしたことで布団がずれ落ちると、ぼろぼろのジャージがあらわになった。所々引きちぎれたり、穴が空いていて、その穴から覗く痣が生々しく見るに堪えなかった。
「じっとしてろ!」
「だめだ、阿良々木先輩。私は阿良々木先輩に謝らなければならないことがあるのだ」
「謝ることは後ででもできるだろ!今は寝てろ!」
押さえ付けようと手を伸ばしたが、
「だめなんだ、今じゃないとだめなんだ」
神原はやんわりと腕を捕んで押し返した。だが、その押し返す力の弱さにさらに不安を募らせるだけだった。押し返されたというより、僕が神原の押し返している意志を汲み取って手を引いたという方が正しいぐらいだったのだ。あれだけ溌剌とした神原がまるで生気を失ったように見えることは異常事態以外の何ものでもなかった。
「今じゃないとだめってどういう事なんだよ……」
それに加え、神原の言葉が最悪の事態を言外に示唆していた。
「そのままの意味だ、阿良々木先輩」
「そのままって、どのままなんだよ!」
力任せに拳を床に打ち下ろした。
その一撃で床が僅かに軋んで、拳から腕にかけて電気が走ったように激痛が巡ったが、どうでもよかった。
神原が瀕死の状態であることだけで僕が取り乱すには十分だった。
こんなところで死んでいい奴で
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