コヨミフェイル
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その中を覗いているような感覚を覚えたのは自分だけの秘密にしよう。
それはさておき、押し倒して半裸に剥いた妹を舐めるように頭から足先まで見てから裏返して同じことをした。
表現からはわからないだろうが、僕はいたって真剣である。いかがわしい気持ちなんてない。妹なんかにいかがわしい気持ちになったりはしない。だから、僕の影からこれみよがしに大仰そうなため息が聞こえたとしても僕に何等関係ないことである。
「えっ!何何何何!?新手の性的虐待!?」
月火はその間更に目を白黒させて、手足をばたかせるもなされるがままになっていた。
「無傷のようだな」
月火が無傷だとわかると、立ち上がった。
頭に上っていた血がすーっと引いた、というよりかは気が抜けた。ほっとしたのもあるかもしれない。
「無傷じゃないよ!?傷だらけだよ!」
「何!?傷なんてなかったぞ?」
ていうか、月火は不死身だから傷があったとしてもすぐに治って、傷も何もあったものではないけれど。
「お兄ちゃんのせいで女性としての自尊心が見るに無残なほどにずたずただよ!」
「おいおい、貴様の断崖絶壁を絵に書いたような体のどこに自尊心を抱くほどのものが備わっているのってうおっ!何しやがるんだ!!」
真実を言っているまでの僕に月火はやり投げの如くどこからとも無く取り出した千枚通しを僕に投擲した。
喉に刺さる寸前で掴んで事なきを得た。
バタ子さん顔負けのなかなかの制球力、いや制錐力である。後半裸に剥いたというのに、千枚通しなんかどこに隠していたのだろうか。戦場ヶ原に文房具収納術を伝授されたのか?
…………恐らく、そうだろうな。
余計な事ばかり吹き込みやがって何のつもりなんだ!
「二度も裸見ておいて言うことじゃないでしょ!」
「…………きっと大きくなるさ」
「そんな薄っぺらな同情はなんていらなっいー!」
「他人もまた同じ悲しみに悩んでいると思えば、心の傷は癒されなくても気は楽になる」
「尤もらしいこと言ってごまかそうとしないでっ!」
尤もらしいも何もシェークスピアの言葉だからそう聞こえて当たり前だけれど。
「それよりも、何で羽川は僕にメールを送ったんだ?」
月火が無事ということはまだ襲われていないということなのだろうか。それで襲われる前に僕を護衛に付かせたということか。
「お兄ちゃん、こっち」
ヒステリックから復帰した月火が乱れに乱れた浴衣を直して憮然たる顔で僕を先導した。
月火の台詞が字面だけを見ると、『お兄ちゃん、エッチ』にも見えなくはないと思うのは僕だけだろうか。
うん、まあ、気のせいだな。
「おい――」
振り返って斧乃木ちゃんに声を掛けた――つもりだったが、予想に反して斧乃木ちゃんはそこにいなかった。忽然とと
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