コヨミフェイル
009
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矢張りまだ完全に水に流してくれてはいないらしい。月火は影縫さんの正義の例外にしてくれたのだが、その例外も影縫さん次第では例外ではなくなるのだ。貝木なら未だしも、影縫さんに限ってそれはしないだろう。
「僕には偽物の妹はいません。馬鹿と正義がモットーの血の繋がった妹が二人いるだけです」
僕はお返しとばかりに言った。
それに影縫さんは、ふん、とだけ言って話を戻した。
「黄泉蛙が怪異を喰わんのは逆に喰われてまうほどに弱い奴やからや。せやけど、都合ええことにエネルギーの塊ゆうような不死身の怪異が自分が怪異ちゅうことも知らん戦闘力なぞ零に等しい奴ときとる。こんなにも喰らうのに打ってつけな奴はおれへんと思わんけ?」
さらにそのお返しとばかりに不適な笑みを浮かべながら影縫さんは言った。
「…………っ!!」
そうだ。その通りだ。春休みに忍が三人のプロフェッショナルに襲われ、四肢を奪われたのは不死力の象徴である忍の身体を我が物とするためではなかったか。不死身の怪異は強さの程度によらず、それ自体に価値があるのだ。
「だけど、忍にさえ見抜けなかったんですよ。それでなんで忍に引けをとる怪異が見抜けられたんです!」
「おどれの妹はもうよお知られてもうてんねんや」
「えっ?」
「落ち着いてよお考えや。うちら二人におどれと旧ハートアンダーブレードに貝木。少なくとも五人にも知られとるやん。それに多分おどれは他の人にもゆうてたりするんちゃうんけ?」
「……五人に言っています」
羽川に戦場ヶ原、神原、千石と八九寺だ。八九寺が人に数えられかはよくわからないが、他に言い方も思い付かなかったので人に数えた。
五人には月火に何かがあったときのために怪異であること、それも不死身の怪異であることを包み隠さず伝えた。程度の差はあれど、五人全員が驚いていた。
けど、五人ともそれ以上のことはなかった。いつもと変わらず月火には接してくれた。
まあ、月火に八九寺が見えていなようだが。
「ちゅうことは少なくとも十人にも知られとるゆうことや。そんだけ知られれば、怪異の存在力に十分影響及ぼすわ。しかも、うちが無害認定を出したから、それなりに同業者にも知られているやろうしな。多分、十数人ぐらいやろな」
「だけどたかが二十数人なんて!」
「されど二十数人や。誰にも知られへんかったんが、急にそれほどの人に知られたんやさかい、おどれの妹の怪異としての存在力がごっつ増してもおたんやな」
怪異の力の源はどれだけ人に知られて畏れられるかだ。どれほど、名を轟かせていた怪異だとしても、忘れ去られば、死に絶える。神も信仰されなければ廃れるようにだ。
「くっ……、くそ!だったらこんなことをしている場合じゃねえだろ!」
自分が火憐や月火を怪異から遠ざけ
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