コヨミフェイル
009
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腹に僕はその口調にひょうひょうとした忍野を思い出せずにいられなかった。
「何か忍野みたいですね。出し渋らないで言ってほしいんですが」
「そないなつもりはなかったんやけど、まあ、確かに忍野くんはこないなことしそうやな。前にもそないなことを言われたっけか。ついでに忍野くんやったらこないなこともゆうんやろうな――元気ええなあ、何ぞええことでもあったんけ?」
と、忍野なら如何にも言いそうなことをおどけて言う影縫さん。
「頭に血を上らせてもええことはないで。ヒントをやるさかい、落ち着きぃや」
「ヒントなんか望んでいません。時間がないんです」
そんな影縫さんに対して苛立ちを隠さずに言った。
しかし、影縫さんは僕の言葉を聞いておもむろに嘆息して
「その様子やと全くわかっとらへんみたいやから、教えたるわ」
と、呆れたように言った。
「お人よしの忍野くんには何べんも助けられとったようやけど、今はおらへんし、堂々と言うのも何やけど、うちがここにおんのも今回はうちの不手際のせいやからや。他にも退治屋は少なからずおるけど、こないな縁もゆかりもないゆうような場所にそんな都合よお来てくれるんかなあ」
影縫さんは嫌みっぽい笑みを浮かべて言った。
「そんでもって聞かせてもらうけど、これからは頼れる人がおらへんときに怪異絡みの事件に巻き込まれたらどないするつもりなんかな?阿保みたいに走り回んのけ?」
「…………っ」
沈黙せざるを得なかった。ぐうの音もなかった。
先程斧乃木ちゃんに窘められた直後である。自分の思慮のいたらなさが無性に情けなく、腹立たしくなった。
「せやから一人でどうにかできるように少しでも一人で考えさせたろゆうてんねん」
それなら初めからそう言ってほしかったという拗ねた思いもあったが、押し止めた。
「わかりました」
「んじゃあ、切り替えて行こか。ヒントはおどれの身内や」
「僕の身内……?」
唐突に影縫さんの口から出た言葉を飲み込めなかった。僕の身内という意味をではない。なぜ僕の身内がヒントになるかだ。僕の妹は怪異とは切っても切れない縁があるのは確かだ。一人は怪異の毒にやられ、一人は怪異そのものだ。しかし、それが今回の件に関して何の手掛かりとなるのか見当もつかなかった。
「黄泉蛙に人間を喰う時間はない。なら後喰えるのは自然と絞れると思うけどな」
と、言われれば
「怪異……ですか」
と、答えるしかない。人間か怪異かの二元論だ。二者択一だ。
「その通りや」
案の定の返答だ。
「それと僕の身内がどう関係して――」
「おるやん。偽もんの身内が」
答えが出たところで疑問を投げ掛けようとしたが、遮るように、阻むように影縫さんが言った――わざわざ『偽物の』という修飾語を付けて
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