コヨミフェイル
009
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」
「え?」
斧乃木ちゃんの言葉に無意識的に境内の方に目を遣った。
月火が斧乃木ちゃんに上半身を吹き飛ばされた映像がフラッシュバックしたこともあって、頭に血が上って全く気づかなかった。それに加え、影縫さんにあまりにも気を取られて重大なことに気づいていなかった。
服が破れているだけで、その下の体はいたって無傷だった。服の破れ方からして致命傷の一つでもしそうなものだが、体には何事もなかったように、否再生したように傷一つなかった。追い込まれているはずの少年は斧乃木ちゃん顔負けの無表情だった―顔だけに。焦りも恐怖の類もその顔からはまるで感じられなかった。
少年は怪異に憑かれている。そう思わざるを得なかった。
「それに実況見聞したお前様の妹御の思い人の家で嗅いだ匂いと同じ匂いが此奴からするのう」
「じゃ……、奴が雌鳥ということか!」
「大方そうじゃろうな」
「影縫さん、気が済むまで殺っちゃってください―じゃなかった!憑かれているからといって、やり過ぎじゃないのかよ!」
全く取り繕えていなかったが、何事もなく続けた。
だけど、まあ、勿論後半部分も本心から言ったことではある。怪異に犯されているからといっても限度がある。傷が再生するにしても、再生力は無限じゃない。今は凌いでいてもいつかは再生力が底をついて、致命傷を負うかわからない。
「前にも言ったと思うけど、お姉ちゃんはやり過ぎることがないから不死身の怪異ばかり退治してるんだよ」
斧乃木ちゃんは僕が口を滑らせたことにまるで気にする事なく言った。
「それは怪異が憑依していないときの話だろ!」
「は〜」
斧乃木ちゃんは肩を竦めておもむろに大きなため息を無表情でついた。
「だからお姉ちゃんが手加減しているのがわからないの、鬼いちゃん」
だって、まだあの少年は体を真っ二つにされてないじゃないか。
と、斧乃木ちゃん。
ついさっき「お姉ちゃんはやり過ぎることがないから不死身の怪異ばかり退治してるんだよ」とか言ってなかったっけ。
「お姉ちゃんと一度闘ってわかっていると思っていたけど、やはり鬼いちゃんは鬼いちゃんなんだね――僕はキメ顔でそう言った。あのときお姉ちゃんが本気で鬼いちゃんを殺しに掛かっていたら十中八九死んでたんだよ。感謝しないとね」
それはそうだろうけれど、そんな感謝のされ方をされる覚えはないぞ。それに、
「あれで手を抜いていると言いたいのか?」
あの怒涛の攻撃がか?残像とかで拳が夥しい数に見えるぐらいに高速の攻撃を加えているのにか?アニメじゃん。
「そのようじゃな。まあ、もう終わるみたいじゃぞ」
割り込むようにして忍が言った。
僕の後ろで斧乃木ちゃんを睨め付けていた忍は斧乃木ちゃんから視線を外して境内の闘いを見ていた。
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