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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
クリスマス特別編 聖夜の約束
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口にすることができない。
それがわかっているように夏音はさらに強く抱きしめてくる。
───やめてくれ。これ以上はもう……俺に優しくしないでくれ。
彼女は優しく微笑んで耳元で囁いた。
「……わかってますから」
「なんでだよ……なんで……」
どれだけの酷い言葉をいま彼女に浴びせようとも退くことはないであろう。それだけ夏音は彩斗以上に彩斗を理解しているのだ。
───今だけは……この優しさに甘えてもいいだろうか。それぐらいは許してくれるだろうか。
「ありがとな……夏音」
「私は彩斗さんの力に少しでも慣れて嬉しい、でした」
まじかでみた彼女の笑顔はまるで天使のようだった。そんな笑顔を見ていると押さえ込んでいたものがこぼれ落ちていく。
それを隠すように彩斗は彼女の胸に顔を埋めこむのだった。
「もう大丈夫だから、ありがとな」
「いえ、少し恥ずかしかったですが、彩斗さんが元気になってよかったです」
ロウソクに照らされた夏音の顔はほのかに紅潮していた。
あれから結局、十数分の間、彩斗と夏音は抱き合った状態のままだった。よく考えてみればとてもいけないことをしていた気がするがそれは今は置いておこう。
「さあ、イチャつきも終わったことじゃし、そろそろ寝るぞ、夏音」
待ちくたびれたと言わんばかりにニーナが不機嫌そうに口を開いた。
イチャついてねぇ、と言ってやりたいところだったが今回に限っては否定できない。
夏音は無言で頬を赤らめているだけだった。彼女はテーブルに乗っていたニーナを抱きかかえ、寝室へと向かうために彩斗へと背を向ける。
「そうだ、夏音。これ」
彩斗は立ち上がって机の上に置かれていた小さな黒い箱を渡す。
「これは?」
「まぁ、クリスマスプレゼントかな。夏音には色々と迷惑かけたしな」
夏音は小さな箱を開けた。すると大きく目を見開く。確かに中身を見たら驚くのは当然なのかもしれないな。
黒い箱の中身は、銀色に輝く指輪だった。
「あ、ありがとうございます」
動揺しながらも夏音は受け取ってくれた。
「それではお先に失礼します」
「ああ、俺もすぐに行くからさ」
彼女はこちらに一度礼をすると部屋の扉を閉めた。
再び、最初の時のような静寂がリビングを包んだ。
彩斗は同じようにソファーに深く腰掛けて、目の前に置かれたショートケーキを見た。長い間ロウソクに火をつけていたせいでかなり短くなっている。
まだ全て乗り越えることはできないだろう。またくじけることもあると思う。だが、彩斗には支えてくれる人たちいる。
それでも今日だけは、今日というこの日だけは少しだけ感傷に浸らせてくれ。
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