暁 〜小説投稿サイト〜
ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
クリスマス特別編 聖夜の約束
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本の赤いロウソクが火を灯していたからだ。普通に考えて深夜一人で食べるケーキにロウソクなど灯す必要などない。この行為が意味することなど一目見ればわかることだ。

「これは別に気にするな。俺ももうすぐ寝るから先におまえは寝てろ」

「それを気にするなというのが無理があるわ。律儀にプレゼントまで用意しておるのに」

 ケーキの隣には小さな黒い箱が置いてあった。その中身はニーナは知っている。
 それもそのはずだ。彩斗がニーナに頼んで余分に作ってもらったものなのだから。

「……やっぱ隠せねぇか」

 口角をわずかに吊り上げて不器用に笑った。

「すまない。……今は一人にしてくれないか」

「…………」

 ニーナは無言のままだった。
 彼女が彩斗を心配してくれていることはわかる。だが、今は一人になりたい。
 この気持ちを誰かに話したところで意味など何もないだろう。ほとんどの悩みは人に話せば解決するかもしれない。だが、彩斗のことに関しては話が違うのだった。
 目の奥がじんわりと熱くなっていく。涙を堪えるためにうつむく。

「……彩斗さん」

 不意に聞こえてきた声に彩斗は目を見開く。
 なんでここにいるんだ。
 こんな姿を見せたくない。
 彼女の前では弱音は吐かないと決めたんだ。

「か、夏音……いや、違う」

 銀髪碧眼の小柄な少女。夏音だ。
 彩斗は必死で溢れ出そうになる涙を押さえ込む。

「どうしたんだよ。もう寝てたんじゃないのか?」

 いつものような口調で話そうとはするが、少し声が震えてしまう。

「いえ、彩斗さんのことが心配でした」

「別に心配することはないよ。ほら、もう遅いからさ」

 できるだけか夏音の顔を見ないようにうつむく。今、彼女の顔を見れば確実に彩斗は弱さを出してしまう。その前に彩斗の前からいなくなって欲しかった。
 そうすれば何も気にすることなく押さえ込んでいるものを出すことができる。

「あとついでにニーナも連れてってくれ、俺ももうすぐに寝るからさ」

「ですが……」

「明日はなんもないと思うから遅くまで寝てられると思うからな」

 夏音の言葉を遮って彩斗は言葉を続ける。彼女の優しさに頼ってはいけない。これは彩斗だけの問題だ。
 友妃も古城も雪菜も浅葱も、そして夏音も関係のない彩斗一人の問題だ。

「だからさ……だから……一人にし───」

 彩斗の言葉を遮って温かで優しい感触が包み込んだ。夏音が彩斗の体を後ろから包みこむ。

「……夏音」

「大丈夫です。そんなに抱え込まなくても大丈夫でした」

 優しい彼女の声が、言葉が彩斗を弱くしてしまう。覚悟が揺らいでしまう。
 必死に言葉を探す。しかし思いつくそのどれも
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