第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
七月二十七日:『星辰の日』T
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午前六時ジャスト。七時までに家を出れば、余裕で間に合う。
「ほう、ほうほう。天気予報とな……織姫一号か。これが儂の時代にもあればのう」
『てけり・り。てけり・り』
しかし、どうも置いていくのが心配だ。見詰める先、ショゴスを座椅子がわりに番茶を啜りながら、またもテレビにかじりついている市媛。熱心に、朝の情報番組を見ている。
勿論、連れていった方が問題が大きい。因みに、ショゴスは二分割している。これで、逐一部屋の情報を知れる筈だ。ショゴスが買収されなければ、だが。
「じゃあ、行ってくる。今日の夜は、ちゃんと居ろよ?」
「応とも。閨の用意は任せておくが佳い。後、そうさな……三人くらい生娘を連れて楽しもうぞ」
「はいはい、寝言は寝てから言えよ」
「呵呵呵呵……すぴ〜」
冗談めかして笑って済ませているが、一体どこまで冗談なのか。戦国時代は両刀遣いが多かったとは聞くが。
そんな一抹の懸念を、振り払って。二本預かっている部屋の鍵の一つを残して、部屋を出た。
コンクリートの階段を降りる。エレベーターなどと言う便利なものはない。
その道すがら、見付けた後ろ姿。藤色の和服に割烹着、足袋に草鞋。竹箒を動かす度に、艶めく黒髪。長く垂れ下がる、纏められて猫の尻尾めいた後ろ髪がゆらゆらと。
「おはよう御座います、撫子さん」
「あら……おはよう、嚆矢くん」
声を掛ければ、振り返った眼鏡の女性。管理人の大和撫子。朗らかに、癒されるような微笑みを浮かべて。
足下、数匹の猫達。三毛、斑、白、黒。じゃれつくように、仔猫達は竹箒に猫パンチを繰り出している。どうやら、掃除をしていたのではなく……既に済ませた後で、猫と遊んでいたようだ。
「相変わらず、猫好きなんですね」
「ええ、犬も嫌いじゃないけどね。やっぱり猫の方が好きかしら」
楽し気に仔猫達をあしらい、転がしたり撫でたりしながら。答えた彼女が、思い出したように。
「あ、そうだわ。ねぇ嚆矢くん、実は実家からお肉が送られてきたんだけど」
「頂きます」
「はやっ……! まぁ、お裾分けするつもりだったんだけどね。一人じゃ腐らせるだけだから」
即答であった。だが、仕方ない。年頃の男子としては、やはり肉が食いたいものだ。
しかも彼女の実家から送られてくる肉というのは、牛や豚、鶏ではなく『山羊』。やたら黒く、見た目は悪いが……そもそも、他の山羊肉など見た事はないが……滋味に溢れ、まさに活力そのものといった具合だ。
「実はカレーを作ってあるの。今日が二日め、食べ頃よ?」
「はい、そ
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