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七夕のラプソディー
第四章
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第四章

「あの方にこれを捧げるのだ」
「笹だけ?」
「無論違う」 
 そうではないというのであった。
「この笹を飾りそのうえでだ」
「御願いごとの短冊も飾るのね」
「当然だ。それを飾らずしてどうする」
 そしてさらに言うのであった。
「愛美よ」
「うん」
 妹の名を呼んでの言葉であった。
「七夕とはまさに日本のクリスマスなのだ」
「そうだったの」
「左様、だからこそ笹をこれ以上になく美しく飾るもの」
 少なくとも彼はそう考えているのであった。
「さながらクリスマスツリーの様にだ」
「そういえばお兄ちゃん十二月になったらお店の前に大きなツリー出すわよね」
 なお呉服屋である。それでも彼は出すのだ。
「それで今もなのね」
「そうだ、この竹は姫に捧げる」
 右手を拳にして今言い切った。
「今から私はその為に彦星となろう!」
「それで麻美さんは織姫なのね」
「運命により一年に一度しか出会えぬ二人」
 彼は織姫と彦星の話をそう解釈しているのである。
「その運命の日にだ!」
「また何かするの」
「左様、我が妹よ」
 ここでその愛美の方を振り向くのだった。そのアイドルでも通用する美少女の方をだ。
「御前はそこで見ているがいい」
「それだけでいいのね」
「私は今より彦星となり大きなことを実現させるのだ」
「滅茶苦茶なことじゃなくてね」
「愛とは何か」
 言っていることは既に滅茶苦茶である。ただし本人に自覚はない。
「誠とは何か」
「また随分古い漫画のこと言うわね」
「永遠の名作だ」
 梶原一騎、ながやす巧の作品である。何処までも愛とは何かを追求した恋愛小説の不滅の名作である。週刊少年マガジンである。
「その通りに私もまた」
「言っても止まらないからそういうことは言わないけれど」
 流石に妹だけあって兄のことはよくわかっていた。
「とりあえず麻美さんの迷惑にはならないようにね」
「御前の義理の姉となる人だ」
「それもう決まったの」
「私の中では決まっている。そう、あの出会いは運命だったのだ」
 やはり言っていることがかなり滅茶苦茶である。既に竹を前にしている時点でだ。
「では今から取り掛かろう。この竹を究極の七夕の竹にするのだ」
「短冊とか飾り作るのなら手伝うけれど」
「それもいい」
 妹のこの申し出を断ってしまった。顔を竹に戻している。
「全て私がやる。姫の為に!」
「まあ頑張ってね」
 こうして彼は竹と向かい合った。そうしてそのうえで鋏や色紙を用意して紙の鎖や短冊、星やそういった飾りをつけていく。忽ちのうちに鮮やかな様々な飾りで覆われた竹が完成したのであった。
 その竹を見てまずは満足する弘樹であった。
「よし、これで完成だ」
「それでどうするの?」

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