第四章
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第四章
「とてもよかったわ」
「よかったの」
「そう、とても」
やはり彼女も笑顔だった。穏やかで満ち足りた笑顔で曾孫達に言うのだった。
「温かかったわ」
「温かいって?」
「音楽が」
「そうよ。温かかったわ」
また言うメアリーだった。
「とてもね」
「音楽が温かかったの」
「今の曲が」
「そうよ。それに」
その満ち足りた笑顔のまま言葉を出すメアリーだった。
「皆の心がね」
「僕達の心が」
「温かかったんだ」
「ああ、そうだ」
まさにそうだと答えたのは今度はリチャードだった。
「そうだよ。御前達の心が温かかったんだよ」
「僕達別にね」
「そうだよね」
皆で言うのだった。
「ただひいお爺ちゃんとひいお婆ちゃんの為にって思っただけで」
「本当にそれだけで」
「別に何も」
「それなのよ」
しかしメアリーはまさにそれだというのだった。
「だからなのよ。温かいのよ」
「だから温かいって」
「どういうことかな」
「わからないわよね」
「そうだよね」
曾孫達には誰もわからなかった。そうしてさらに言い合うのだった。
「ただそれだけなのに」
「他にないのに」
「何で温かいのかな」
「それなんだよ」
だがリチャードはまた孫達に言うのだった。
「だからなんだよ」
「だからって」
「何か余計にわからないけれど」
「本当にそれだけだったのに」
「私達の為にって考えてくれたのよね」
首を傾げさせたままの彼等にまた話すメアリーだった。
「そして演奏してくれたわね。皆で練習してそれで」
「うん、そうだよ」
「それはね」
このことについてはありのまま話すことができた。まさにその通りである。
「だから。それがなのよ」
「温かいんだよ」
メアリーもリチャードもそれだというのだった。
「その私達のことを考えてくれた心がね」
「温かいということなんだよ」
「そうなんだ」
「これがなんだ」
彼等にはわからないことだった。誰もがきょとんとした顔になって二人の話を聞いていた。
しかしだった。その中で。二人は曾孫達に言うのだった。
「それじゃあ皆で」
「パーティーにしましょう」
二人だけでの祝いは止めるのだった。それをするというのである。
「皆でな」
「さあ、お菓子を出してきて」
「お菓子!?」
「お菓子を皆で食べるのね」
「そうよ。あとジュースもね」
それもだというメアリーだった。
「出してそれで皆で楽しみましょう」
「うん、それじゃあ」
「皆で」
満面の笑顔で応える曾孫達だった。そうしてそのうえで皆楽しむのだった。二人のその幸せな金婚式を。皆で祝うのであった。
金婚式 完
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