八十 平穏来ず
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「いいな、綱手。早急に大名を呼ぶ。五代目火影の就任を宣言するのだ。里は本日より、その就任式の準備に入る」
「御触れを出せ。数日の内に里の者にもこの事を伝えよ。五代目の披露をせねばな」
テキパキと部下に指示する、御意見番二人。彼らは慌ただしく動いている一方で、無意識に安堵の溜息を漏らしている。
部下に命じて彼らを観察していたダンゾウは、眉間に深い皺を刻んだ。
「しくじったな、サイ」
ちらりと横目で睨むと、目前にて項垂れていた少年の頭が益々下がる。恐縮する彼に構わず、ダンゾウは淡々と叱責した。
「うちはサスケから署名状を奪う。そういう手筈だったはずだが…?」
「……申し訳、ございません…」
感情の一切を表に表さないように育てた故、少年―サイからは何も読み取れない。
けれどその瞳は確かに揺れており、彼もまた人の子なのだと、皮肉げにダンゾウは冷笑を口許に湛えた。
「………もうよい」
深く溜息をつくと、サイの肩が僅かに跳ねる。勢いよく顔を上げたかと思うと、彼は主に懇願した。
「今回の件、本当に申し訳なく思っております。けれど、どうか……っ」
「…………」
再度深くサイが頭を垂れる。彼の望みをダンゾウは即座に察した。けれどあえて何も答えず、立ち去りかける。
「ダンゾウ様…」と切望の眼差しをひしひしと受け、仕方なしにダンゾウは肩越しに振り返った。
冷然と言い渡す。
「…お前の兄は、失態を演じた弟に果たして会いたいと思うか?」
去り際の無慈悲な一言。
ひゅっと息を呑み、悲嘆に暮れるサイの存在をダンゾウは背中に感じた。けれど無情にも踵を返す。
否、彼はわざと冷酷に徹したのだ。
サイが兄と慕うシン。彼が本物のシンではないと唯一知る為に。
自らが鳴らす、こつこつという杖の音。天井にこだまするその音は、ダンゾウとサイが知る真実の相違と同様に、いつまでも響いていた。
軽やかな足取りで街中を駆ける少年を、道ゆく人々が微笑ましげに眺めている。少年の頭上を陣取る子犬の存在も、心暖まる光景の一部だ。
里人達の視線を、快活な笑顔で受け止めた少年――犬塚キバは、久方ぶりの休暇に胸を躍らせていた。
いつものように頭の上に乗っている相棒も、ふんふんと鼻を機嫌良さそうに鳴らしている。
珍しく任務が無いので日課の散歩を終えた後、何をしようかと、キバは相棒である赤丸に声を掛けた。
不意に頭上で嬉しげに赤丸が吼える。相棒の視線の先を追って、キバは眼を瞬かせた。
昔、悪友達と共によく遊んでいた公園。
そこで見知った顔が揃ってブランコに座っていた。どうやら漕いでいるわけではなく、話をしているようだ。
彼らの姿を見た瞬間、キバの上向きだった機嫌
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