彼と家出の訳
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ってきた碓だが、今は不思議と静かでしかも海童へ向け、分けるつもりなのかカレーパンまで差し出している。
俯いて何かをブツブツ呟いているが……別に気にすることなく、それを受取ろうと海童が手を伸ばした―――瞬間。
「刻んで!!」
「!」
一言雨音にも負けぬぐらい大きく叫び、碓はパンを放り出して思い切りつかんだ。
庇うように出された海童の腕を。
「てめぇっ……抗ってんじゃねぇ! つーか分かってたのかよっ!!」
「……態度の代わり様が不自然すぎる上、呟いていた内容も少しは聞き取れていた。お前、バレバレなんだよ」
「くそっ!」
無謀にもそのまま投げ飛ばそうとする碓に、海童は足払いを入れると右手で脚をつかみ上げ、遠慮なく思い切り持ち上げて頭を地に激突させる。
彼が声を上げる前には八極拳にも似た構えから、背部での体当たりを打ちかまして渡り廊下から放り出し、壁にぶつかった辺りで止まった彼と相対するよう、一定の距離をともって向かい合った。
「結局何が言いたい」
「俺とっ…… “決闘” しろ大山!! 俺が勝ったら、イナホちゃんに頭土に埋まるまで下げて謝れっ!!」
「……」
実力差は先程のやり取りで分かりきっており、碓に勝ち目がない事など明らかだ。
それでも碓は、海童が女の子を―――しかも海童を慕ってくれていたの娘を泣かせた事が、何を置いても許せないのかもしれない。
海童はそれを理解したうえで……答えた。
「すまん、誤解させちまっていたみたいだな」
「……は?」
余りの予想外な、その返答を。
「ご、誤解って……」
「昔から俺、悩んでいると目つきが悪くなる癖があってな。今回は根が深いから、つい不機嫌になっちまっていたか……」
「へ? お、お前イナホちゃんの事避けていたんじゃ……」
「いや、合同授業の際に内容が内容とは言え睨んじまった事を後悔してな。どうやったら誤解を解いて謝れるか、少し悩み過ぎていた」
つまり今までは彼もイナホも気を使いすぎ、そして先程睨んだのは別に恨みがあった訳ではなく、意を決してみようとしたら逃げられた……という訳らしい。
「じゃあ舌打ちをしたのも、俺にじゃあ無く?」
「融通のきかん自分にだ。この癖、いい加減如何にかしねえと……」
余りに間抜けな真実に、碓は大口を上げて呆けてしまう。そして―――
(俺の苦労を、そしてカレーパンを返せぇぇぇぇッ!!)
心の中で大絶叫した。
「お前あっさりしてる時はクソあっさりしてるのに、面倒くせえ時は死ぬ程面倒くせぇよ! 普通にあやまりゃあいいだろ! 内容が幾ら重くても謝らなきゃ何
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