彼と家出の訳
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分も上がらねぇよなぁ……」
次いで表情を若干ながら険しいモノへと変え、机に突っ伏して寝ている海童の方へと視線が写る。
寝息すら聞こえない事からするに、別段睡眠をとっている訳ではないようだが、それでも不機嫌だと言う事は雰囲気から伝わってくる。
其の時に吐かれた碓の溜息は、ちょっとしたかわり映えない、暗い外の景色を見ていた時よりも、数段深く大きかった。
「で、雨だけでなくこっちも三日か……いい加減にしてくれよな……」
ほとほとウンザリした声で呟くも、音量が小さいのか海童は反応を見せない。
何時の間に来ていたのだろうか……そんな海童の前に、イナホが弁当の包みを二つ持ち、少し俯いて立っている。
イナホは頭を軽く振ると、意を決したように顔を上げ、彼へと声を掛けた。
「カ、カイドウ様。ハルコ先輩からお弁当を預かっていますので……この天気ですし、宜しければ校内でお食事を一緒に―――ッ……!?」
「……!?」
話しかけられ顔を上げた海童と眼があった瞬間、イナホは声を詰まらせおびえた様な顔となる。
その原因は何か?
……角度が良かったか、悪かったのか、碓にも見えていた―――
―――海童の、親の仇でも睨みつける様な、射殺さんばかりの眼光湛えた、恐ろしげなその表情を。
一歩二歩と後ずさってから、イナホは涙を散らして走り去って行ってしまった。
「どう言うつもりだよお前!!」
「………あ?」
「うぐ……!?」
半分ほど勢いが減衰してはいるが、それでも十二分に怖い表情に碓は怯みかける。だが意地があるのか、海童へくって掛る事はやめなかった。
「お前折角飯にさっそってくれてたのに、あんな睨みつけ方で追い返すこた無いだろっ! 今日だけじゃあねぇ、合同授業の時からおかしいぞお前! 何があったんだよ!?」
「……チッ」
碓の叩きつけるが如き質問に答える事無く、海童は舌打ちを一つかまして立ち上がり、そのまま何時もの帽子を深く被ると、鞄を担ぎ無言で教室を出て行ってしまった。
「あんなろ……っ!」
碓の様子を気に掛ける事無く、無言で海童が歩いて行く先……そこは購買であったが、チラリと見て生徒で一杯な事を確認すると、バッグから飲むタイプのゼリーを取り出して、ものの十秒で飲み干した。
だが育ち盛り……もとい鍛え盛りの体にそれだけでは足りないか、不満げな空気を湛えている。
だが、向かう先は部室ではなく玄関であり、このまま帰る事は最初から決めていたらしい。
と、外に面した渡り廊下にさし当った時……彼の前に人影が現れた。
(……碓か)
先にも教室で怒鳴
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