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滅ぼせし“振動”の力を持って
彼と家出の訳
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程なくして海堂の母は他界。
 勝負の際の負傷は関係なく、病の所為だと医者は説明したらしいが、感情面で認められないか海童は父親を責め続けた。

 小学校卒業してから一カ月で家出同然で大山道場を出て行き、親戚を頼ってそこから寮のある学校での生活を選んだらしい。


 今も、父親を恨んでいても可笑しくはないだろう……人一人の命がかかった確執は、そう簡単に埋められるモノではない―――――春恋は、そう締めくくった。


「そう、だったんですね……お母様の事が……」


 話を聞いて、不用意に彼の父親の話を持ち出した事を後悔したのか、余計に気落ちし始めるイナホを見て、春恋は慌てて弁解しようと身振り手振りで気持ちを伝えようとする。


「………で、でもでもっ! あんな態度とる事無いわよね! 私が一言ビシッ! と言ってあげましょうか!?」
「い、いいんですよ! ハルコ先輩……さっきも言いましたけど、わるいの、私なんですから……」





 時を同じくして、雨の降り続く噴水傍の広場。

 こんな大雨の中で外を出歩くモノ好きなどほぼおらず、海童は雨を浴び続けながら体術と衝撃波を練習していた。

 こんな天候だと言うのに外にまで出たのは……やはり、父に対する負の思いと、名を口にした、そして何かを知っている様であったイナホへの、やり場のない怒りが故だろうか。


「ふっ! しゃっ!」


 いつも以上に熱を込め、いつも以上に集中して打ち込まれる打撃は……いつも以上に重苦しい音を響かせる。


「ゴオアアアアアッ!!」


 大なる方向と共に真正面へと衝撃波の固まりを放出し、降り注ぐ雨を吹き散らし、木々を纏めてなぎ倒しながら地面を抉り、誰も使う事のない新たな道を作り出す。

 それはまるで彼自身の中にある、燃えあがれず燻りただ暴れる感情を、何処にも置く事の出来ない思いをぶつけている様にも感じられた。


「……クソッ……!」


 舌打ちをし、歯を食いしばり、曇天を軽く見上げる海童の顔には、何時もの苦笑い気味なモノや、半分冷静なモノなど全く無く、純粋に苛立ちが全てを占めている。

 そんな彼の心に呼応するように、雨天から晴れぬ空は雷鳴までも響かせていた。












 降り始めてから既に三日。


 だと言うのに、雨は未だ止む気配を見せず、降水量が少ないか多いかの違いがあるだけで、あれからずっと振り続いている。


 以外とアウトドア派なのか、それとも純粋に雨が嫌いか、自分の襞に肘を当て頬杖をついていた碓は、窓の外を見ながら遣る瀬無い顔で溜息を吐いている。


「はぁ〜、幾ら授業が午前で終わるったって、こんな雨振りじゃあ気
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