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滅ぼせし“振動”の力を持って
彼と家出の訳
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「今回の事、すまないと思ってる……本当に悪かった!」


 再び頭を下げた海童に、イナホは一つ咳ばらいをし、頬に手を添え顔を上げさせる。

 そして、軽いビンタを一発打ち込んだ。


「女の子を心配させた罰です。ちゃんと、伝えるべき事は伝えないとだめですよ? 海童さま」
「ああ、そうだな……」
「えっと、各言う私も不用意に話題を出してしまって、御免なさい……です」


 海童は下を向いて頭を掻き、鼻から息を大きくはいてから、緩慢な動作で下げていた頭を上げる。そして、少々勢いを付けて指でイナホの額を突いた。


「あう」
「知らなかったなら、そう言う事もあるだろ。おあいこだ……こっちも別にかまやしねぇよ」
「……はい!」



 こうして仲直りは成功し、春恋へと電話で子猫が無事である旨を伝え、寮への帰路へと着く。


「あの、カイドウ様。その子を守ってくれてありがとうです! 今回、何も出来ませんでしたけど……」
「何言ってる、皆で探したから見つかったんだ。それに俺もたまたまで―――ん? 雨が……」
「あ! カイドウ様! 虹ですよ虹!」
「お……運がいいのかね」


 彼等の心の暗雲が晴れた事に、まるで天が反応したかのように、何時の間にやら雨はもう上がっており……空には、二重の虹が掛かっていた。


 家に帰った後、その子猫はどうもイナホと海童になついた様で、額の十文字傷から『モンジ』と名付けられ、学園長の許可を取り、寮内で飼う事にしたのだった。


 ―――その事で、コダマが異様に喜んでいたのは、また別の話。


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