彼と家出の訳
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ある日の体育の授業。
雨が吹きつけ物を叩く音が響く、天日学園の体育館。
この日は全クラス合同授業の日で、アズキと決闘した栗傘や姫神コダマファンクラブの小林など、他のクラスの生徒と共に、エレメントを使った実習をする事となった。
実習と言っても殴ったり蹴ったりする訳では無く、今は水晶玉の様な何かを全員持たされて座りながら、皆十人十色な唸り声を上げている。
水晶の中では何やら怪しげな靄が漂っており、人によっては多かったり少なかったり、疎らだったり一点に集中していたりと、此方もまたそれぞれ違っていた。
その中で偶々座る位置が重なったらしい、海童、イナホ、碓、うるちの内……海童や碓はそこそこ、イナホやうるちはかなりの量を一点に集中させる事が出来ていた。
中でもうるちは全学年中一番と言っても過言ではない成果を見せている。
「……でもさー、本当だったんかねぇ、ソレ」
「ん?」
海童が水晶玉を見て、以前会長に貰ったビーズに似ていると思ったのと、奇跡的にも同時。
面白いタイミングで不意に呟いた……いや、内容からするに如何やら、数秒前までは行われていたらしい会話の続きを碓が口にすると、それにうるちは僅かに振り向いて何処か確信を含んだ声色で返す。
「間違いないわよ。秋先生たちが念には念を入れて、徹底的に調べたんだから。それに幾ら疑ったとしても本当に何も無かったんだから、“事件の記憶が無い” って言うのを信じるしかないわ」
今彼女が語ったとおり、海童が力付くで収めたあの事件の後、組は念入りに記憶や力の痕跡を調べられたが、曖昧どころか吹っ飛んでおり、何も有力な情報は得られなかったのだ。
しかし、エレメントをごく少量ながらでも感じ取れたことから、これは組本人の意思では無く別の第3者による介入があった事が窺え、万が一敗北した時の為に記憶を操作できる力でも使っていたのだろうと、学園長達教師人はそう判断した。
……ちなみに件の組は今、自分の意思でやった訳ではなくとも、傷付けたのは事実であるからと、本人の願いもあって停学中である。
記憶が解けた後、真っ先に海童とうるちに、借りを必ず返すと声高に言い放って、何と白昼堂々土下座し、最悪退学でも構わないと凛とした表情で迷わず言い切った。
その姿は、確かに春恋が卑怯な事をする筈が無いと、戸惑ったのも分かる所作であったらしい。
だが、うるちの話にも個人的に少し納得がいっていないのか、碓は未だ首を傾げていた。
「俺達が悩んでいてもしょうがないだろ、碓。何かあった時の為に、そして着実に歩んで行く為にも、今はやれる事やるだけだ。じっくりと、確実にな」
「……まあそうだけどよ。いや……やっぱお前
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