三十話 気付(フィンド)
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そしてこう会えたのだから幸せの他何もないのだ。
でも、広翔は[幸せ]ではなく〔幸運〕と頭の中で思うだけだった。
感じることはできない。
泣いている妹(理奈)になにをすればいいかうまくわからなかったが、撫でるように頭に手を置いた。
彼女は吸われるように広翔の手の中で泣いていた。6年間の溜めていた涙がこぼれ落ちていた。
嬉しい、悲しい、どちらもあるだろう。あの事件以来自分の性格も生活も変わってしまった。
しばらくこのままだった。
やがて、青いジャージを持った姉の方がやってきた。
「なに泣かしとんのや」
「いや別に、」
…事情を話した。
「そーか、そーか、やっと分かってくれたか。よかった。」
彼女は嬉しそうな顔をして言った。
ということは、この女の子が広翔の姉の【加奈】だった。
「いままで大変だったやろ、全部洗い流してき。」
そう言って青いジャージを渡した。
「…ありがとう」
姉の温かい心だった。
広翔には心が感じられないが、これが親切、ということだけはわかった。
「じゃ、風呂はいってくるわ。」
……
「もう泣くなやて、」
加奈は、椅子に座って泣いている理奈に言葉を掛けた。
「…うん」
そう言って一回頷いた。
こうやって家族で揃えたのは約6年ぶりだったのだ。彼女には感動すべきことだった。
…
「…さて、布団でも敷いてあげるか。」
そういって、また加奈は他の部屋に行った。
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