暁 〜小説投稿サイト〜
横浜事変-the mixing black&white-
少女が行う破壊行動に容赦の文字は存在しない
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あたかも先ほど鈴奈にガード代わりの役目を負わされた男のように。

 投げられた衝撃が新たな鈍痛を呼び、鈴奈は成す術もなく身体を九の字に曲げる。そのとき腰に付けていた銃がミルに抜かれ、無理やり仰向けにされたかと思ったら、腹の上に仁王立ちしてきた。鈴奈はあらゆる場所に蓄積した痛みと悔しさに歯噛みしつつ、自身を見下ろす冷たい瞳に呟いた。

 「あたしの上に乗るだなんて、いい度胸してんじゃん」

 「……」

 「シカト?それとも日本語通じてない?ったく、殺すなら殺せばいいじゃない。男に(また)られて殺されるよりはマシだからさ」

 「……」

 「何とか言いなさいよ。早くしないと他の奴らに不意打ちされるわよ?」

 もはや抵抗する気もないのか、鈴奈は適当な調子で敵に決着を促す。しかし眼前の外人は首を絞めるわけでも銃口を額にかざすわけでもなく、じっと鈴奈の顔を見ていた。まるでそうする事で彼女の内面を読み解こうとしているかのように。

 そろそろ視線の重圧に耐えられなくなったそのとき、白色特攻服の女性はゆっくりと言葉を紡ぎ出した。

 「……どうして震えてるの」

 「……」

 無感動な瞳を向けるミルに鈴奈は目を逸らす。銃声と硝煙と刃のせめぎ合う音が連続的に繋がるこの場所で、二人だけは別の世界の住人だった。

 「貴方は何かを恐れている。あれだけの身体能力と咄嗟の判断力を持っているなら、きっと普段も人より飛び抜けていると推測できる。それなのに貴方は恐れている」

 「知ったような口聞かないでよ、ムカつくから。ていうか喋ってるヒマあんならどいてくんない?殺すわよ?」

 「……」

 すると白眼の女性は鈴奈の言葉に従って仁王立ちを解いた。小回り効いた立ち上がりで態勢を戻した鈴奈だが、そこで敵の視線が自分ではなく、その先にある事に気付いた。

 「ん?ちょっとアンタやる気ないの?真正面からぶち抜かれても……」

 そこで腰にマウントしていた銃を取り出そうとする鈴奈。しかし敵の手に渡ったのを思いだして舌打ちする。しかし、相対する敵は無防備な彼女を攻撃する素振りを見せるどころか、完全に戦闘モードを解いているようだった。

 その様子があまりにも自然だったので鈴奈も後ろを振り返る。

 そこには電灯の明かりに照らされた二人組がいた。

 一人は青の制服を着たスラリとした体型の少女。もう一人は少女とは真反対で大きな体躯の持ち主。茶色のロングコートを着ているのがどことなく紳士的な何かを彷彿とさせる。

 「誰よ、あれ。……って」

 訝しんだ彼女の顔は徐々に焦りの色を帯びていった。急いで耳を手で塞ぎ、目をぎゅっと閉じる。口を開けるのも忘れない。それと同時に瞼の先が真っ白に輝いた。

 
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