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横浜事変-the mixing black&white-
殺意はナイフと拳銃と言葉で紡がれる
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笑って泣いて喧嘩し合った人が」
「……」
――ああ、そうか。
ケンジに関する新たな結論が要の脳を打ち抜いた。硝煙の臭いが鼻を突くのを感じながら、彼はゆっくりとそれを口に出した。
「結局、俺とお前の違いはそこなんだな」
「?」
「お前はどんなに辛くても最後に前を向く。けれど俺は違う。誰かのせいにして現実の音を耳に入れないんだよ。ホント、ただの人殺しだ」
「……田村君」
「あー、なんか吹っ切れた。もう堕ちるところまで堕ちてみるか」
無表情に自虐の笑みを混ぜた狂気じみた自分に気付き、さらに笑えてくる。結局何が言いたかったのか。それすらも分からなくなりそうだった。
孤独に塗れた少年は、同類にして歴然の差がある敵を見据えて呟いた。
羨望と怨嗟が彩る絶望の言葉を。
「お前は希望で、俺は絶望。二人合わせて死ねば全部なくなる。そうだろ?」
ケンジの厳しい眼光を受けてもなお、彼は口を止めない。
「どっちにしろ、最初に殺すのはお前だけどなぁ!」
戦う理由にも現実にも、『殺し屋』という存在にも見捨てられた哀れな少年は、殺人鬼となって眼前の少年を殺しにかかる。
それが全ての終わりにつながるという妄想を信じて。
*****
元チームCのリーダーは少し先で繰り広げられている少年達の殺し合いを見て楽しそうに微笑んだ。とはいえ、それは聖母のそれではなく残忍な光に満ちた蛇そのものだったが。
と、そこで斜め上から殺意の念を掴み取り、大河内は真横に回転した。その直後、大河内がいた地点をナイフが突き刺し、フェンスにいた人物が道路に降りてきた。
「俺を殺しにきたんですか、赤島さん」
「ベテランからの粛清だなんて滅多に味わえねぇよ?ここは乗っておくべきだと思うぜ」
大河内に奇襲を仕掛けたのは赤島だった。右手の包帯は依然として取れず、大河内に戦闘ですでに一歩遅れている状態なのは一目瞭然だ。
そんな無精髭を生やした組織の古参を前にしても、大河内は動揺せずに語り出した。
「殺されるにはまだ早いですね。けれど俺は赤島さんを高く買っているんでね。本望と言えば嘘ではないかもしれません」
「口まで達者なんだから、俺も太刀打ちできねえかもなぁ。で、どうして俺を買ってんだ?」
「もちろん先輩だからです。鋭い洞察力が生み出す仮説は全て的を射ていたし、戦闘能力は言うまでもない」
「お世辞にも程があるな。俺は後ろから表舞台で踊る連中の姿勢を支えてやるだけなんだからよ」
「それが殺し屋としての最高な立ち位置だと思いますよ、俺は」
赤島は「やれやれ」と苦笑混じりに呟くと質問を投げかけてきた。
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