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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
七月二十七日:『狂信者』U
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瘴気を撒き散らす『一冊』は。

「“黒い雌鳥(ブラック・プレット)”──代価は、これでどうだ?」

 あの狂信者が有していた、写本ではあるが精度は折紙付きの魔書(グリモア)。同じ魔導師ならば、その価値は分かろう。使うもよし、売るもよし。

「冗句にしちゃあ、面白れぇ。たかだか写本一冊の為に、旧支配者を相手にしろってか」
「受ける訳ないだろ、そんな依頼! 一昨日来やがれ(Shit,idiot)!」

 それを一笑に伏して、レイヴァンはテーブル上に両足を投げ出す。“黒い雌鳥(ブラック・プレット)”を蹴り飛ばしながら。床に落ちた魔書はばさりと、羽ばたくように着地して見えた。

「あと、()()()。“グラーキ黙示録(グラーキ=アポカリプス)”も全て、此方のもの。それで手ェ打ってやる」
「そうだ、あと十三冊…………え、いや、ちょっ……伯父貴(オジキ)?」
「ああ、構わねぇ。こっちの目的は、あのクソッタレの神を殺す事だけだからな。魔導書なんざ好きにしろよ」
「よし、交渉成立だな。となりゃあ善は急げ。明日の夜、夜戦決行(Let’s Party)だ。合流場所は……ここの玄関(エントランス)二十時丁度(ふたまるまるまる)

 話は終わり、嚆矢は頭を下げて振り返り……そのまま、部屋を去る。市媛は、いつの間にかその背中に。燃え盛るような三つの瞳で、立ち尽くすセラを嘲笑いながら。

「じゃあ、グラーキは任せたぜ。何とかなんだろ、お前なら。俺はバカンスで忙しいからよ」
「…………」

 その娘の肩を叩いて、大欠伸をしながらレイヴァンはさっさとベッドルームに消える。最後には、ぽつねんとセラだけが残り。

マジで(Hooo)…………!」

 唐突な展開に、頭を抱えて踞る。それに今度こそ、辺りの『何か』が逃げ出した。

超ぉぉぉ(lyyy)…………!!」

 娘は大気を震わせながら、一気に立ち上がる。端正な美貌を歪めて、天井に向けて。

「────最っっっ悪ぅぅぅ(Shiiiiiiiiiiiiit)!!!」

 航空機の爆音と紛う程の絶叫を、虚空に轟かせながら。
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