第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
七月二十七日:『狂信者』U
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最早無抵抗だ。
「ふぅ、さてと。じゃあ、商談といこうか?」
「ちょっ……ボクは無視かよ!」
《儂までも無視か!》
「ちょっと黙ってろ、セラ。後、銃は仕舞え。こいつぁ勘だが……暴発するだけだろうぜ」
それを全て、無視して。葉巻を灰皿に押し付けたレイヴァンはどこか遠くに向けて合図を出す。背後の銃口が消えた事以外に嚆矢は知る由もないが、窓の彼方のビルの上。赤いライトシェードの真下から、バレットライフルにて嚆矢を捕捉していたティトゥス=クロウに向けて。
前後からの強烈な殺気が消えた事で、僅かに落ち着きを取り戻す。後は、目の前の屈強な男を説得するだけ。
「来い、って言われたから訪ねたってのに。米国式の歓迎は手荒くていけねぇ」
「悪りぃな、真っ当な教育は受けた事がねぇからよ。で、『グラーキを討つ』とか言ってたが?」
「ああ、だから力を借りに来た。実際、倒せるかどうかとかも聞いとこうかと」
刹那、辺りの空気が揺らめいた。丁度、『グラーキ』の名が出た瞬間に──『何か』が、逃げ惑うように。同じく、背後のセラも息を飲んだのが分かった。
どうやら、狙いを付けた相手は中々の有名どころらしい。
「若いってのは良いねぇ。旧支配者を殺す、か……」
クッ、と喉奥で笑った男。その瓶麦酒を一気に煽りながら。ぐびり、ぐびりと二度、喉仏が上下した。
それで飲み干したらしく、口を離せば『ぽん』と音が立つ。
「──旧支配者は死なねぇ。あれは、『そういう災害』だ。天災だと諦めた方がいい。地震とかハリケーンと同じさ、人間にはどうしようもない」
「そうかい。つまり、『人外なら出来る』って訳だろ? だったら勿体付けてないで、スマートに会話しようぜ」
「可愛くねぇ餓鬼だな、お前……」
機先を制されて、幾分気分を害したらしいレイヴァンが空の瓶麦酒を転がす。因みに、テーブルの上にはズラリと空瓶が転がっている。
そして、ソファのすぐ脇には明らかに後付けの簡易冷蔵庫。そこから新たな瓶を一本取り出し、親指だけで栓を飛ばした。
「曲がりなりにもありゃあ神だ、生半の人外じゃ無理だよ。そうだな、『顕現』させた実戦派の魔導師二人懸かりでギリ、ってトコか。次にどこぞの阿呆が呼び出すまでは追い返せる」
そして、更にもう一本を取り出して──此方に投げて寄越した。それを振動させぬように気を付けて受け取ると、栓を……面倒臭いので、ショゴスにかじらせた。
「殺せないが、封じられる訳だ。因みに、『顕現』って?」
「お前の背後に居座ってる奴の事さ。なあ、“悪心影”────エキゾチックな嬢ちゃん?
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