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お嬢様と執事
第四章
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ました」
「宜しいですわ。それでですね」
 我儘な注文はさらに続く。
「ココアはお部屋の中ではなく前に置いておきなさい」
「前にですか」
「そう。ワゴンの上に置いて」
 注文はこうであった。
「コップは二つ。オーストリアのものを」
「畏まりました。むっ!?」
 ここでまたあることに気付いた。
「コップを二つですか」
「お皿も。スプーンもですわ」
 やはりここでも正人には何も言わせない。自然に言葉を続けてそれをさせないのだ。
「スプーンはイギリスから取り寄せたあれを」
「銀のあのスプーンですか」
「それも二つですわ」
 しつこい位に言い加えてくる。
「宜しいですわね」
「畏まりました。それでは」
「十分以内に」
 今度は時間まで指定してきた。
「扉をノックしてその前においたら下がりなさい。宜しいですわね」
「お部屋には」
「入ってはなりません」
 声が厳しいものになった。絶対に許さない言葉であった。
「おわかりですね」
「わかりました。それでは」
「わかったら十分以内に」
 また厳しい声で正人に告げた。
「わかりましたね」
「はい。それでは」
 こうして正人に急いでココアを淹れさせて持って来させる。十分で持って来た正人は紗智子の扉の前に立つ。ノックしようとすると何故か部屋の中から話し声が聞こえてきた。
「!?携帯でも使われているのかな」
 そうは思ったがやはり扉は開けなかった。ただ言われたままに扉をノックするだけだった。

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