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鎧虫戦記-バグレイダース-
第04話 双璧のカイエン
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おじいちゃん″侵略虫″なの?初めて見た!」

ハトはうれしそうにはしゃいでいる。

「まさか初めての″侵略虫″が老人とはな‥‥‥‥‥‥」

ヒゲ中年は一言つぶやいた。

「″侵略虫″って人間そっくりなんだな」

セキレイはカイエンの髭を触りながら言った。

「知らんのか?ワシらの歴史はお主らの数万年早く始まっとるんじゃぞ?
 だから、ワシらが人間というのが正しいんじゃ。
 お主らは後から言い始めたんじゃから」

カイエンはセキレイの手を外しながら言った。

「アンタはそこでは偉かったのか?」

ヒゲ中年はカイエンに訊いた。

「昔は″双璧(そうへき)のカイエン″と呼ばれるほど有名じゃったんじゃ」

カイエンは自慢げに言った。

「今は無名のじじいじゃよ」

彼は茶を取り出しながら言った。

「おじいちゃんはそんなに強いの?」

ハトはカイエンの茶を作るところを見ながら言った。
セキレイとヒゲ中年も気になったらしく顔を向けた。

「‥‥‥‥‥‥‥‥ちょっと見とれよ」

カイエンはゆっくりと立ち上がり、居間にある盆栽の前に立った。
三人はその光景を座ったまま眺めていた。

 シャキン――――――――カチン

剣を引き抜き、鞘に納めるような音が聞こえた。

 グラ‥‥‥‥‥ バラバラ

盆栽が五、六個に斬り分けられていた。
そのまま畳の上に音を立てて落下した。

「スゲェェェェーーーーーーーッ!!」
「すっごーーーーーーーーーーい!!」
「目にも留まらない速さの居合か‥‥‥‥‥」

三人はそれぞれ驚嘆の声を上げた。

「ざっとこんなもんじゃ。最盛期ならもう倍には斬れたかのぅ」

カイエンはそう言い捨てた。

「昔はもう一人片割れがいたんじゃよ。だが、今は向こうの星で頑張っとるはずじゃ」

彼は元の位置に座りながら言った。
それを聞いたセキレイが声を上げた。

「こんな剣豪がもう一人いるのか‥‥‥‥」
「″騎士(ナイト)″と呼んでほしいのぅ。ほれ、刀じゃなくて剣じゃし」

カイエンはいつの間にか手の中に長剣を握っていた。
諸刃の剣で、鞘には鮮やかな装飾がされていた。

「ワシは王国の元騎士じゃからな。こいつはワシの相棒じゃよ」

カイエンは剣を懐にしまった。

「さて、老人の長話に付き合ってくれてありがとうよ。
 そろそろ間抜けな看守たちでも勘付いたじゃろう」

彼は入口まで歩いて襖を開けながら言った。

「ありがとな、カイエンじぃさん」
「じゃあね、おじいちゃん」
「お世話になりました」

三人はカイエンに一礼した。

「自由のために頑張れよ」

カイエンは三人を見送りながらそう言った。

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