最後のページを閉じたなら
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繰り返しているようで、家では練習と称して男性姿が多いらしい。まだ完全ではないが、少しずつ上達はしているようだ。
「ティア、このノートどこ置けばいいんだー?」
「そこの箱の中…ってさっき説明したばっかりなんだけど」
右手に持ったノートを振るナツに答えながら、ティアは別の箱を漁る。似たテイストの洋服を畳み直して箱に詰め、恋愛系の小説を中心とした本を別の箱にしまう。
2年前からずっと、イオリが死んだ事実を認められずにいた結果がこれだ。埃を払う程度の事は定期的にしていたが、実はまだ手らしい手は付けていない。今回の件でどうにか受け入れられた気がして、ずっと放っておいた遺品整理をしようかと考えたのだが、1人でやるには量が多く、とりあえず人手を探していた。
そこで目を付けたのが、飽きもせず喧嘩するナツである。力仕事が必要になれば役に立つでしょ、と扱き使う気満々で引っ張りだしてきていたりするのだが、それはティアだけの秘密だ。
「…なあ」
ふと、どこか迷ったような声色でナツが呟く。また1から分類の説明か、と思いながら顔を上げると、背を向けてノートやメモを整理するナツがいた。
分類に迷っているようには見えない。現に手は動いている。
「何」
「……」
「アンタらしくないわね。言いたい事あるなら言いなさいよ」
隠されてると余計気になるわ、と続けて、ティアは明るい黄緑のワンピースを畳む。これを着ているところは見た事がないが、余所行き用だろうか。そういえばさっきあの人らしくない、可愛らしさを重視したと思われるブローチがあったっけ。このワンピースに合わせてたのかな…なんて考えを頭の片隅に巡らせながら、ティアは気になってもう1度顔を上げた。
「ねえ」
「何であの時オレに言ったんだ?“力貸せ”って」
一瞬、言葉の意味が解らなかった。
そもそもそんな事言ったっけ…?と考えるくらいには忘れてしまっている。しばらく頭を捻らせると、ようやく思い出した。
―――――だから、力を貸しなさい。バカナツ
確かにそう言った。
勝てないと言われて、1人では無理だと自分でも気づいていて、だから協力を求めた。それが間違っていたとは思わないし、今更それについて聞かれるような事もなかったと思う。
小首を傾げつつ眉を顰めると、変わらず背を向けたままのナツが口を開く。
「炎と水じゃ相性悪ィし、お前竜人だろ?滅竜魔法が弱点なら、オレ以外の方がよかったんじゃねえかと思って」
バサバサと小さく音を立てて紙の束をまとめるナツは背を向けたままで、こちらから見えるのは背中だけ。時折動きに合わせて揺れる桜色の髪に目を向け、視線をその背中に移す。
何も考えていないように見えて実は誰よりも仲間を気遣う彼に、テ
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