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Element Magic Trinity
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その発言に荒れたのは言うまでもなくクロスである。命刀の副作用によってまだ怠さが残っているはずなのに、それを微塵も感じさせないいつもの調子で「姉さん行かないでくれええええええ!」と泣きついたのだ。シスコン恐るべし。
とはいってもティアの決意は固く、これから仕事を多くこなして適当にアパートの一室でも借りようと思っていたらしいのだが―――――姉の決意を知って、黙っていられるクロスではない。
それを知った彼はどうにか納得し、従者4人を集めてこう命令した。

『姉さんの新生活の為、資金を集めろ!』

まさかの命令に従者4人が引っくり返ったのは当然といえば当然だろう。とはいえ、主の命令がそうであるなら動くのが従者。動けない主に代わってハイペースで仕事をこなし、一軒家を買えるほどの金額を用意してみせたのだ(その後、4人は疲れ果ててギルドに顔を出す力もなかったが)。それを知ったギルドのメンバーは思った――――次アイツ等がギルドに顔出したら全力で歓迎しよう、と。
1日に最低3個の依頼をこなせばそれなりの資金が得られるし、どうやら彼等は貯金から少しずつではあるが出したようで、聞いたティアは珍しく申し訳なさそうだった。
更にクロスも動く。仕事に行けるような状態じゃない自分を恨めしげに呪い続けていたクロスは、暫くして家から何かを持ってきた。

『ふふ…ようやく出番が来たか。姉さんにもしもの事があった時の為に貯めていて正解だった!』

どこか得意げな顔で差し出された紙幣の束を、最初はティアも拒んだ。いくら弟が好意から渡してくれるとはいえ、かなりの大金である事に間違いはない。それを受け取るのにはやはり遠慮があって、首を横に振ったのだが―――流石に、「受け取ってくれ姉さん!俺は姉さんを応援したいんだ!」なんて言いながら涙目になられては、断る方が悪い気もしてきてしまう訳で。
17歳の青年が涙目で姉に縋りつく図ははっきり言って随分情けない様子ではあったが、結果的に姉の為になる事の為ならそこまでの行動はどうでもいいのがクロスである。どんなに情けない図になっていようと、姉にさえプラスになる事があればそれでいい。
そこまで言われては流石のティアも困ったようで、半ば押し付けられるように受け取ったのだ。


―――――という訳で、従者達の努力と弟のシスコン魂によって購入されたと言っても過言ではないこの家で、ティアは1人暮らしを始めた。
いや、1人暮らしというのは少し間違っている。相棒のヴィーテルシアは最初から一緒に暮らす気満々で、少ない荷物をまとめて家の前で待っていたらしい。玄関の前で尻尾を揺らす相棒に最初は戸惑っていたティアだったが、まあ別に1人(1匹?)増えた所で変わらないか、と納得したようだった。
そんなヴィーテルシアは最近人間の男性姿に変身出来るよう練習を
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