暁 〜小説投稿サイト〜
Element Magic Trinity
最後のページを閉じたなら
[6/20]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
た。それでも声のトーンが上がらないのは、状況が状況だからだろうか。つい先ほどまでなら、あの塔の中でこの会話が繰り広げられていたのなら、パラゴーネの声のトーンは普段のそれよりも明るく、跳ねるようだっただろう。

「パラゴーネ、お前…」
「そんな相好をするな、エルザ・スカーレット。私は闇ギルドの魔導士、罪悪を購うのは至理だろう?寧静だ。整然、罪悪は購う」

そう言って口元を緩ませるパラゴーネに、言葉を失う。赤い目を細めて微笑んだパラゴーネは、言葉を失う彼等を安心させるかのように頷いた。

「寧静だ。罪悪を購い終えたら、私は師匠の傍近に帰還する」
「どうしてそうなる!?」
「何を述すか、師匠。私はグレイ・フルバスターの弟子なのだぞ?師匠の傍近に存在するのは整然の事局だ。安慮しろ、師匠に不興は(こうむ)らない。弊害になると断決すれば登時に抹消する」

トン、と軽く自分の胸を叩いたパラゴーネは、それ以上言う事はないと言わんばかりに背を向け、クロノに両腕を伸ばした。クロノは迷うように目線を彷徨わせ、パラゴーネの手首を見る。
遠くに聞こえる馬車が近づく音に歯を噛みしめたクロノは、諦めたように息を吐いた。

「解った、オレはお前を逮捕する」
「クロノ!」
「それがオレの仕事だ。言っただろ、ナツ。オレは立場上、こういう奴は庇えない。ティア助けんのに力貸してくれた奴だとしても、だ」

何か吹っ切ったように軽い調子で頷いてみせたクロノに、噛みつきそうな勢いでナツが叫ぶ。それに言葉を返すクロノの青い目はどこか冷めていて、それ以上何も言えなかった。
と、クロノの後ろに馬車が停まる。

「隊長!」
「おー、来たか」
「来たかじゃありません!人に書類押し付けといて…」
「人聞き悪ィ事言うなって。“頼んだぞ”って渡しただけだろ、返事聞いてないけど」
「それを世間一般では押し付けたと言うんです!」

クロノより年上に見える男性の言葉をのらりくらりと避けつつ、次々に現れる馬車に「ご苦労さん」と声を掛けていく。
まだまだ隊長相手に文句を言い足りないらしいクロノの部下の男性は、クロノの前に立つパラゴーネに目を向けた。怪訝そうに顰められる眉に、パラゴーネの方がぴくっと震える。

「この人は?確か妖精の尻尾(フェアリーテイル)にこんな魔導士はいなかったはずですが……」
「コイツは血塗れの欲望(ブラッティデザイア)のパラゴーネだ。手錠用意しとけ」
「!血塗れの欲望(ブラッティデザイア)…!?」

クロノの口から飛び出たバラム同盟を担う闇ギルドの名前に、その場にいた隊員全員が驚愕から息を呑む。その空気に怯んだらしいパラゴーネは半歩下がるが、すぐに思い直したように足を戻した。
そんな彼女を見て苦笑したクロノは、「ああ、そうだった」
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ