最後のページを閉じたなら
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由は解らない。
あー、やら、うー、やら呻いていたクロスはふらふらと視線を彷徨わせ、ふと目の動きを止めた。
「……アイツは」
先ほどまでの涙声が一瞬にして鋭くなる。敵を見るような目に振り返れば、こちらへと駆けてくるミラ、ヴィーテルシア、アランの姿があった。
「ミラ!大丈夫か?」
「私は平気。でも…ごめんね。アルカのお父さん、気づいたらいなくなってて……」
「…いや、いい。どうせそうだろうとは思ってたしな」
ミラの言葉に顔を曇らせたアルカだったが、すぐにニッと口角を上げる。その目がどこか悲しそうなのにミラは気づいたが、「そう」とだけ返す。
本当は悲しいのに敢えて隠すのは、ここにいる仲間に心配をかけないように。それが彼なりの優しさなら、口を出すのは1番してはいけない事だと思ったのだ。
「アラン君!」
「ウェンディ、ココロ…よかった、2人とも無事で」
「それは私達のセリフだよ。ね、ウェンディちゃん」
「うん。アラン君も無事でよかった!」
それぞれ傷を負いながらも、3人は笑い合う。
その様子を後ろから眺めていたヴィーテルシアは静かに目を閉じた。魔法陣が展開し、一瞬にして少女の姿から狼へと変身する。
「ふぅ、やはりこれが落ち着くな」
「人間姿よりも?」
「いや、元が人間だからな。人でいるのが1番だが、如何せん女は慣れん。だが、女帝の業火は女姿でしか使えないし、男姿はまだ練習中だし…」
くるりと尻尾を回すヴィーテルシアにティアが問うと、困ったような声が返ってきた。紫の目で相棒を見上げていると、その視線に気づいたのかティアがこちらを向く。
「何よ」
「……どんな姿であれ、お前の隣が落ち着く。それだけだ」
言いながら照れくさくなって顔を逸らす。少し驚いたように僅かに目を見開いたティアだったが、暫くしてふっと口元を緩ませた。
それが余計照れくさくて、ヴィーテルシアは目を伏せる。
そんな様子を、距離を置いてパラゴーネは見つめていた。
普段単独行動の多い彼女には、目の前の光景全てがスポットライトを当てたかのように輝いて見え、それに惹かれるように気づかないうちに足が1歩前に出る。
「……!」
けれど、その足はすぐに引っ込んでしまった。裾がボロボロになったマントの胸元に手を当て、1歩、また1歩と後ずさる。
クロスの鋭い瞳を見た。それにつられるように振り返ったティアの、やや見開かれた目を見た。それだけで、パラゴーネは自分が本来何であるかを思い出す。
(私は、“天秤宮”パラゴーネ。私は……敵讐、だ)
彼女が師匠と呼び慕う彼と、一部の面々はパラゴーネを信じてくれた。だけど、それがギルドの全員に共通する事とは限らない。パ
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