最後のページを閉じたなら
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たいのに、その言葉はちゃんとあるのに、声に出せない。声が出ない訳じゃないのに、言えない。
「頼りにならない弟で、ごめん」
たった一言。クロスからの謝罪で、一気に何かが壊れた気がした。
背負わせてはいけない、これ以上自分の事を後回しにさせてはいけない―――そう思って取った行動で、ティアはクロスを傷つけた。その度に弟は無力に嘆いて、苦しんで、なのにティアはそれに全く気付かなくて。
「……何よ。姉なんて、結局戸籍上だけなんじゃない」
気づいたら、呟いていた。
ハッとしたように顔を上げたクロスに構わず、悔しさに任せて、爪が食い込むほどに拳を握りしめる。
(姉らしい事の1つも出来ないで、傷つけて。クロスは自分の事も満足にしてないのに、私の事考えてくれてたのに。私は、何にも考えてなかった)
考えて取った、最善であるはずの策。それはティアにとっては何よりもいい策だったけど、クロスにとっては違うのだ。それはクロスからすればまるで、お前は無力だと言われているようなものではないか。
様々な知識を溢れんばかりに詰め込んたはずの脳は、とことん無力だった。
(私、最低だ)
結局、自分の事しか考えていないじゃないか。この行動で誰かが傷つくなんて考えは、掠りもしなかった。
悔しい。悔しすぎて、泣く気にもなれない。
「姉さん……!」
ふわり、と。
視界に見慣れた青が入った。
それとほぼ同時に背中に腕が回され、痛いくらいにぎゅっと抱きしめられる。突然の事に驚きながら目の動きだけで横を見れば、左肩辺りで青い髪が揺れていた。
「無事、なんだな。ここに、いるんだよな。姉さんは…生きて、ちゃんと、俺の前に、いてくれてるんだよな……!?」
焦るような問いかけに続くように、腕に力が入る。これだけで十分ここにいる証明になっているはずなのだが、どうやら心配性な弟は姉の口から聞かない限りは信じないようだ。
戸惑いながらクロスから目線を外したティアは、あやすようにクロスの背中を軽く叩く。
「いるわよ、私なら。ボロボロだけど生きてるし、アンタの前にいる」
そう囁く表情がいつもより緩んでいるのに、声色でクロスは気づいた。軽やかで冷たく、棘のあるソプラノが普段よりも柔かい。
それだけで安心して、張り詰めていた何かが静かに切れた。
「…よかった、無事で……!もう、会えないかと、思っ…うぅ……」
「そんな簡単にくたばってなんかやらないっての。泣くなら泣きなさい、胸なら貸すわよ」
「へ…あ……そんなっ、め、滅相もないっ!」
「?」
小首を傾げるティアからバッと飛びのいたクロスの頬はどこか赤く、意味が解らずティアは眉を顰めた。時々こんな素振りを見せる弟には慣れているが、相変わらずその理
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