最後のページを閉じたなら
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い出すだろう。あの辛かった日々や、傷ついた記憶を。
「……!」
ふと視界に飛び込んだ影に、顔を上げる。
「ザイール・フォルガさんかしら?」
「……そうだが、何の用だ」
咄嗟に右手に魔力を込め、鋭い目で睨みつける。が、目の前の女性はその程度では怯まず、余裕たっぷりの笑みをそのままに1歩近づいた。
警戒を解かないザイールに、女は言う。
「あなた、私達の力になる気はない?」
どうやら全て終わったようだね。
収まる形に収まってくれて嬉しいよ。
……え?僕が誰かって?
そうだなあ…僕に固有の名前はないんだけど……。
傍観者とでも呼んでくれればいいよ。
僕はこの名の通り、常に全てを傍観しているからね。
いや、正しくは傍観する事しか出来ないんだけど……まあ、細かい事は置いといて。
彼等は彼等の日常に戻っていった。
ある青年はある少女の隣にいる幸せを噛みしめて。
ある少女はいつかの日を夢見て。
ある2人はお互いに背中を預け合って。
ある青年は大切な少女を取り戻して。
ある女性は復讐に憎悪を燃やして。
ある青年はある女性に手を差し伸べられて。
ある組織は求めるそれを追いかけて。
僕はまた、いつまでも愛される平凡を傍観する。
……けれど、何も終わってなんてないんだ。
終われば何かが動き出す。そして何かが始まれば、その何かにはいずれ終わりが来る。
だからこの世界には、明確な“終わり”なんてないんだよ。終われば始まるし、始まれば終わる。
だから、彼等はまた動き出す。
――――――まあ、その時までは暫く“終わっていられる”だろうね。
始まりが来るまでは、その先に続きなんてないんだから。
さて、傍観に徹しようか。
彼等の世界はいくら見ても飽きないなあ。
それじゃあ、今日はこの辺で。
……え?最後に僕の正体を教えてほしいの?
僕は傍観者だよ。
ただ世界を見つめ続けるだけの、本当の意味での傍観者。
この答えで満足してもらえたかな?
それじゃあ、またいずれ。
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