最後のページを閉じたなら
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力を削られたような気分だが、今はそれに打ちひしがれている場合ではない。
「今から結構な事言うが、驚くなよ。ついでに引くな」
「う、うん」
「……オレはな」
もう片方の手も、ナギの肩に置く。クロノの言う“結構な事”に表情が強張るナギを真っ直ぐに見つめ、クロノは続ける。
「この6年、お前以外の女と付き合うなんて考えた事は1度もない。ずっと、ナギだけを愛してる」
これは本当だ。微塵の嘘も入っていない。
真っ直ぐにこちらを見つめる青い瞳を見つめ返すナギは、その言葉の意味をゆっくりと噛みしめ、理解する。どうにか理解し終えた瞬間――――ぼんっ、と効果音がつきそうな勢いで、ナギは赤くなった。
目の前で突然赤くなったナギに、クロノは戸惑う。
「お、おい?どうした、大丈夫か?」
「……クロ君って本当、時々無自覚にイケメンだよね」
「?何の事だ?…もしかして、何かマズい事言ったか?」
「私の心臓にとってマズい事言ったよ……」
心臓ばくばくで死にそうだよ、と呟きながら、ナギはどうにか顔を上げる。火照った頬に両手を当てていると、左手にクロノの手が重なった。
前を見ると、愛おしそうにこちらを見つめるクロノがいる。重なった手を降ろし、クロノの肩に乗せると、少し驚いたように目を見開いた。右手も肩に乗せ、小さく首を傾げる。
その仕草に「うあー…」と呻いたクロノは、空いた右手でナギの髪に触れた。
「おかえり、ナギ」
そう言って笑う、クロノに。
ナギも笑って、言葉を返す。
「ただいま、クロ君」
――――――白い部屋で、2人の姿が重なった。
『お疲れ様、十三番目』
「いえ」
その頃――――倉庫を離れ、カトレーンの土地からも離れていくアロマは、耳元に手を当てていた。頭に直接響く声は、笑うように続ける。
『あなたには今回影でよく働いてもらったわね。グレイ君のコートを届けたのも、あなたでしょう?』
「あれは頼まれましたから」
『ああ……ザイール君、だったかしら?』
シグリットの声が、愉快そうに歪む。声だけでも解る歪みに、アロマは表情1つ変えない。
『今頃どうしているかしらね、彼は』
「へー、やっぱりザイールいなくなったんだ」
「ムサシもいないデス」
「いやあ、アイツは刀に吸収されちゃったんじゃないのー?」
悲しい末路だねえ、と口では言いながらも、“死の人形使い”のマミー・マンはニヤニヤとした笑みを消さない。彼女が人の最期を笑うのはいつもの事だ。
“天候を司る者”のセスは、カーリーブロンドを揺らしてマミーの隣に
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